受傷機転,スポーツ競技種目,好発年齢・性別,膝に関する主訴が典型的であることが多く,病歴を聴取しながら身体所見を観察することで,確定診断に至ることも可能である
放置することにより膝関節の不可逆的な退行性変化をきたす疾患が多いため,それぞれの病態に応じて適切な時期における積極的な外科的治療介入が求められる
学校行事,競技会・試合の日程,部活の引退や卒業,仕事を休めないなどの理由により,治療法の選択や手術的加療のタイミングが左右される
初診時の問診で突発的な膝後内側部痛の既往を聞き出し,内側半月板後根断裂を見逃さないようにする
患者からなるべく正確な受傷歴や病歴を,効率よく聴取することが大切である。年齢・性別・スポーツ歴・職業などからも,膝関節における異常感覚と疼痛の原因を鑑別することが可能である。
膝が外れるのではないかという不安感(apprehension)を主訴とする疾患としては,外傷性膝蓋骨脱臼・亜脱臼に続発する「反復性膝蓋骨脱臼」が代表的である。10~40歳代の女子・女性に比較的よく認められる疾患で,何らかのスポーツ外傷を契機に膝蓋骨が外側に脱臼しそうな不安感を生じるようになる1)2)。
バレエ・新体操・エアロビクスなどで初回の膝蓋骨脱臼をきたすことが多い。初回の外傷性膝蓋骨脱臼後には,約2/3の患者が反復性膝蓋骨脱臼,膝くずれ感や膝関節痛などの症状を呈する1)2)。繰り返す膝蓋骨の脱臼は,膝蓋骨および大腿骨滑車部の骨軟骨損傷や関節軟骨の摩耗・変性をきたし,膝蓋大腿関節における変形性関節症の原因となる。膝蓋骨脱臼には,外傷性脱臼の既往がなく,ある一定の膝屈曲角度において常に膝蓋骨が脱臼する「習慣性膝蓋骨脱臼」や,膝蓋骨が常に脱臼した位置に存在する「恒久性膝蓋骨脱臼」などの分類がある。