(大阪府K)
【事後振替(代休)があっても休日出勤手当は支払われる】
休日振替には制度上,休日の振替(事前振替)と代休(事後振替)があり,事前振替を行った場合は元々休日だった日の休日出勤手当の支払は免除されますが,判例や通達で示されたいくつかのポイントに留意しなければなりません。
労働基準法において,あらかじめ特定された休日を別の労働日に振り替えた場合,その取り扱いは異なり,事前振替を「休日の振替」と呼び,事後振替を「代休」と呼びます(いずれも本来的な意味は休日振替であることには変わりなく紛らわしいので,以下,「事前振替」,「事後振替」と呼びます)。事前振替については,割増賃金としての休日出勤手当の支払は免除されますが,事後振替については,割増賃金としての休日出勤手当の支払は免除されません(昭23・7・5基発968号通達および昭63・3・14基発150号通達,以下,「上記通達」と呼びます)。
ご質問では,あらかじめ勤務日は特定されていますが,代わりの休日を特定しておらず,休日を振り替える具体的な事由が示されていません。上記通達によると,就業規則等においてできる限り休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を規定することが望ましいとされ,判例によると代わりの休日を特定していない場合には事前振替の要件を満たしていないとされているため(ほるぷ事件東京地判平9・8・1労働判例772号62頁),休日を振り替える具体的な事由を示し,代わりの休日を特定しておく必要があるとされます。
また,ご質問には「6月~翌年3月末までに3日間の休暇を取ることが決まりました」とありますが,上記通達では,振り替えるべき日については,振り替えられた日以降できる限り近接している日が望ましいこととされているので,これでは不十分であると言わざるをえません。そして,「休暇」とありますが,振り替えるのは「休日」であり,休暇と休日の意味は異なりますので(休暇とは労働義務のある日に労働義務を免除すること,休日とはそもそも労働義務のない日のこと),この点にも注意が必要です。
さらに,振り替えるべき日を設定したときに,振り替えた週の労働時間が労働基準法で定める法定労働時間を超える場合には,その超えた時間について時間外労働となり,36協定および割増賃金の支払が必要です(昭22・11・27基発401号通達および昭63・3・14基発150号通達)。
休日振替については,法令で定める様々な要件に注意する必要があります。安易に判断することなく,専門家に相談した上で行うことが望ましいでしょう。
【回答者】
秋元 譲 KDS労務管理事務所代表社会保険労務士