開業の内科の先生方からは、よく一過性意識消失発作(失神)を一過性脳虚血発作(TIA)として脳神経外科へご紹介頂きます。TIAは正しくは、片麻痺や言語障害などの神経症状が一過性にみられるもので未完成の脳梗塞と考えられ、一過性意識消失発作(失神)とは別の疾患概念であり、本来のTIAでは意識消失を伴うことはほとんどありません。一過性意識消失発作(失神)は、一時的に脳の血流が乏しくなって一時的に意識を失ってしまう状態で、一時的な椎骨脳底動脈系の血流障害により脳幹網様体の障害を生じて起こるとされています。しかし、一般に椎骨脳底動脈系の血管は内頸動脈系の血管に比べて血栓症は生じにくく、一過性意識消失発作(失神)のほとんどは血栓症によるものではありません。
一過性意識消失発作(失神)のうち最も頻度の高いものは血管迷走神経反射性失神(神経調節性失神)で、予後は最も良いとされます。飲酒、長時間の起立、予想外の強い感覚刺激、排尿、精神的ストレスなどが先行する場合が多いとされます。次に頻度が高いのは心原性失神で、これは1年後の突然死のリスクが20%程度もあり、重要性からは最上位になります。特に高齢者では注意が必要で、原因の多くが不整脈によります。不整脈の種類は、心室性不整脈、房室ブロック、QT延長症候群、心房細動、WPW症候群などがあります。一過性意識消失発作(失神)の中には、てんかん発作によるものがあり、この場合は痙攣を伴うことが多いので鑑別は難しくありませんが、紛らわしい場合は脳波検査が必要です。てんかん発作では痙攣後の麻痺がみられることもあります。
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