急性硬膜外血腫の原因の大半は頭部外傷(交通事故,転落,スポーツ,喧嘩等)である。硬膜外血腫とは頭蓋骨と硬膜の間に発生するものであり,出血源は硬膜に存在する動脈(中硬膜動脈)または静脈(静脈洞)である。頻度はJNTDB(Japan Neurotrauma Data Bank)および日本脳神経外科学会の年次報告によると頭部外傷手術例の25%程度である1)。好発年齢は10~30歳の若年者に多い。一般的には,乳幼児や高齢者には少ない。症状の進行は,出血部位や出血する速度と関係し,必ずしも血腫量と相関せず,臨床経過は合併する脳損傷の程度により異なる。予後は脳損傷合併に依存する。
特殊な硬膜外血腫として,出血源が静脈性で亜急性的に発症する後頭蓋窩硬膜外血腫と遅発性硬膜外血腫を忘れてはならない。前者は頭蓋と硬膜との関係が比較的ルーズな小児でみられ,後者は播種性血管内凝固症候群に合併することがある。
臨床(神経学的)診断で硬膜外血腫に特異的なものはなく,画像診断が重要となる。画像診断の第一選択はCTスキャンで,頭蓋骨直下に凸レンズ様の高吸収域(図1)が認められ,基本的に縫合線を超えない。また,超急性期にみられる混合吸収域は,初回検査では少量であっても,急激に増大する可能性があり,注意深い経過観察が必要である。鑑別すべきは急性硬膜下血腫である。脳内出血やくも膜下出血が認められることがある。頭蓋単純撮影で中硬膜動脈や静脈洞に一致した血管溝を横切る線状骨折(図2)を認めることが多いが,骨折を認めない例が10%程度存在する。
CT上の脳損傷には,脳内血腫,挫傷性血腫,脳腫脹などが報告され,脳損傷の合併頻度は重症例〔Glasgow Coma Scale(GCS)8以下〕が7割と結構高い。
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