医師の過重労働の要因としてしばしば指摘される書類作成業務。3月のアンケートでは、多種多様な医療文書の中で、特に見直しの必要性を感じる書類についてお尋ねしました(有効回答67人、複数回答式)。
最も多くの先生が挙げたのは、介護保険の主治医意見書。かかりつけの患者以外からも作成を求められる場面が増えるのに伴い、「ほぼ毎日誰かのを書いています」(開業医)という方も。本人の生活状況は医師より介護職や看護師のほうがよく把握しているのに、医師が書く必要性に疑問を呈する意見が複数みられました。見直しの方向性では「傷病に関する意見」欄の簡素化を求める声が複数ありました。中には、意見書自体の廃止を主張する方も。
次に多かったのは、保険金請求関連の診断書や証明書。保険会社の商品のために無償で煩雑な書類の作成に従事させられることが不満につながっているようです。生命保険協会と日本損害保険協会は3月、診断書様式作成のガイドラインを改定し、加盟各社に様式の簡素化を要請しました。ガイドラインに拘束力はありませんが、医師の負荷軽減のために少しでも浸透することが望まれます。
2015年1月の難病医療法の施行以降、医療費助成の対象となる指定難病は拡大が続いています。医療費支給の認定を受けるには指定医による診断書の提出が必要ですが、指定医の先生からは制度改正を機に記入項目が急増し、「1度の外来で対応が困難になった」などの声が上がっています。
このほか、生活保護の医療要否意見書、障害年金の診断書、診療情報提供書などにも見直すべきとの意見が寄せられました。いずれの書類に対しても、記載を求められる項目の多さとその必要性、医師が書く必然性への疑問が指摘されています。
◉「傷病に関する意見」欄の記載をもっと簡略化してほしい。(開業医)
◉初回は現在のままでもいいが、2回目以降は最低限の項目だけにすればよい。 (勤務医)
◉廃止。調査員による調査のみにすれば介護認定審査会も不要。(勤務医)
◉密に関わっているケアマネジャー、看護師、理学療法士のほうが本人の生活状況をよく把握しているのに、なぜ医師が書くのか。(勤務医)
◉医療クラークによる記入を進めるべき。(勤務医)
◉書類作成に対する報酬が全くなく、枚数も記載項目も多くて作成意欲がわきません。(勤務医)
◉保険会社に文書料を請求できるようにしてほしい。(勤務医)
◉患者さんが記入できるところは自分で書いてもいいようにしてもらいたい。 (勤務医)
◉選択式にして簡便に記載できるといい。(勤務医)
◉難病の制度が変わってから記入項目が一気に増え、1度の外来で対応が困難になった。(勤務医)
◉ガイドラインや診断基準に応じた形での改定なので致し方ないが、実施困難な項目も多数あり、ページ数も多く、なかなか大変である。(勤務医)
◉慢性疾患ばかりで、亡くなるか保護が終了しない限り延々と書くことになる。(勤務医)
◉行政や精神保健福祉センターが書くべきでは。(開業医)
◉結局は日常生活への支障度だけで判断されるのに記載するデータが多すぎる。(開業医)
◉精神疾患の有無を短時間で見分けるのは困難。(開業医)
◉医療秘書による作成が望ましい。 (勤務医)
◉産業医をしていますが、先生によって書き方がバラバラで、何を言いたいのか不明なものもあります。統一書式だと不都合もあるのでしょうが。(勤務医)
◉定型文があるので、文章を選択して数値を入力するだけで作成できるソフトがあればよいと思います。(開業医)