【完全皮下植込み型除細動器とリードレスペースメーカー】
植込み型デバイスの進歩は著しく,経静脈リードを必要としない除細動器(完全皮下植込み型除細動器:S-ICD)やリードレスペースメーカーが登場した。互いに経静脈リードを挿入しないために,解剖学的に静脈アクセスが困難な症例に有効であるほか,リード挿入に伴う心穿孔,気胸,リードの位置ずれ,感染性心内膜炎などのリスクを低減させることができる。
従来から植込みされている経静脈ICDは,リード断線や感染などリード合併症に関連する罹患率および死亡率が高いため,一次予防患者の経静脈ICDの使用に躊躇する場合もあった1)。これらを改善する目的で開発されたのがS-ICDであるが,経静脈リードに関連した短期的および長期的合併症の両方を防止し,断線などのリード不具合のリスクを低減させることができる。しかしながら,ペーシングを必要とする症例には適応とならず,抗頻拍ペーシング(ATP)での不整脈治療はできない。
直径7mm×長さ26mm,重量1.8g,容量1ccという小型の本体で,リードは存在せず,4本のタインで右室心内膜に直接固定するデバイスである。上記リードに伴う合併症がなく,直接心内に本体を留置するため皮下ポケット感染がない。心房ペーシングを必要としない徐脈性心房細動症例や,デバイス感染既往症例が良い適応となる。
【文献】
1) Poole JE, et al:Circ Arrhythm Electrophysiol. 2013;6(6):1236-44.
【解説】
三好章仁 岡山大学循環器内科