脊椎・椎間板の感染症である化膿性脊椎炎の治療では,安静保持と適切な抗菌薬による保存治療が基本となる
起炎菌の同定は,抗菌薬選択の根拠を得ることができるだけでなく,起炎菌ごとに異なる患者背景や,治療成績,治療上の注意点を認識して抗菌薬治療を開始することができるため重要である
起炎菌同定率を上げるためには血液培養に加え,生検施行が推奨される
起炎菌は,黄色ブドウ球菌である頻度が高い。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)脊椎炎は死亡率が高いため,十分に注意を要する
抗菌薬を選択する際には,同定された起炎菌の種類と薬剤感受性,抗菌薬の脊椎・骨髄への移行性などを考慮すべきである
抗菌薬の投与期間では,4週間未満では高率に感染が再燃するとされており,多くの報告で6~8週間の点滴投与を推奨している
医療の発達に伴い,糖尿病,悪性腫瘍などの基礎疾患を持つ患者や,ステロイドや免疫抑制薬の投与や血液透析を行っている患者など易感染性宿主(compromised host)が増えている。加えてMRI検査など画像診断の機会が増えることで,近年,化膿性脊椎炎と診断される患者が増加している。
脊椎・椎間板の感染症である化膿性脊椎炎の治療では,適切な抗菌薬による感染の鎮静が治療の根幹であり,麻痺発症例や椎体破壊の進行例を除き,コルセット装着などの安静保持と抗菌薬による保存治療が基本となる。
他臓器疾患の治療中に行ったMRI検査などで化膿性椎間板炎がみつかり,整形外科に紹介される頻度が増加しているが,起炎菌が同定されていないまま,広域スペクトラムの抗菌薬治療が漠然となされていることもしばしば経験する。
最初にターゲットとする起炎菌を同定することは重要で,抗菌薬選択の根拠を得るだけでなく,起炎菌ごとに異なる患者背景や,治療成績,治療上の注意点を認識して抗菌薬治療を開始することができる。起炎菌が同定されていれば,抗菌薬投与期間は77日で,不明の場合は142日に長期化したとの報告もあり,起炎菌の同定は化膿性脊椎炎の治療成績に大きく影響を及ぼす1)。