【皮膚独自のT細胞叢が皮膚疾患を起こす可能性】
血中memory T細胞において,リンパ組織を中心に循環傾向を有するcentral memory T細胞(TCM)と,組織向性を有するeffector memory T細胞(TEM)の分画が報告されてから四半世紀以上経つ。近年,いったん組織に移行した後,再び循環に戻ることなく組織にとどまり続けるresident memory T細胞(TRM)の分画が報告され,生体内のmemory T細胞が様々な動態を有する複数の分画からなることがわかってきた。
ヒトでもTCMと皮膚TRMの存在が皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療過程を通して明らかになった。さらに,CTCLの中で紅皮症を呈するセザリー症候群がTCMの悪性化,境界明瞭な皮疹を呈する古典的な菌状息肉症がTRMの悪性化であることも判明し,皮膚疾患の臨床像が責任T細胞の動態から説明できる場合があることがわかった。
皮膚疾患とT細胞の関係の研究では,多くが血中T細胞に着目しており,今後TRMのような皮膚独自のT細胞叢に着目した皮膚疾患の解析が,新たな機序解明に役立つと期待される。さらに,皮膚に限らず組織におけるT細胞の機能を解明することが,臓器特異的疾患の機序解明と新規治療法開発につながるかもしれない。
【参考】
▶ Sallusto F, et al:Nature. 1999;401(6754):708-12.
▶ Clark RA, et al:Sci Transl Med. 2012;4(117): 117ra7.
▶ Watanabe R, et al:Sci Transl Med. 2015;7(279): 279ra39.
【解説】
渡辺 玲 筑波大学皮膚科講師