硬膜とくも膜の間の硬膜下腔に膿が貯留した感染症である。脊椎管内にも稀に発生するが,ここでは頭蓋内について述べる。
発生頻度は稀で,脳膿瘍の1/5~1/4である。全年齢層に発生するが,若年者(10~30歳),特に10歳代,男性に多い(男女比=3:1)。感染経路としては,開放性頭部外傷,開頭・穿頭術後,副鼻腔炎(前頭洞炎が最多),中耳炎,乳突洞炎,慢性硬膜下血腫などがあり,乳幼児では髄膜炎に続発することもある。免疫不全状態の日和見感染として発生することもある。起炎菌としては,連鎖球菌(好気性>嫌気性)が最多で,ついで,黄色ブドウ球菌,好気性グラム陰性桿菌,嫌気性菌が多い。乳幼児では,髄膜炎の起炎菌の大腸菌,肺炎球菌,インフルエンザ菌もみられる。また,複数菌感染もみられることがある。
症状として,急性の発熱を含む炎症症状,髄膜刺激症状,意識障害,てんかん発作,片麻痺が重要である。耳鼻科および歯科領域の感染所見の有無〔副鼻腔炎症状(疼痛,圧痛,腫脹)〕などに注意を要する。
頭部CT上,硬膜下腔(大脳円蓋部,大脳半球間裂,小脳円蓋部)に限局性の三日月様低吸収域を認める。炎症被膜形成により内側縁に強い造影効果を認めるが,炎症時期によりその効果は異なる。また,直下の皮質の浮腫は稀または軽度である。
頭部MRI上は,CTと同様の所見であるが,より敏感である。T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示す。拡散強調画像で著明な高信号,ADC(apparent diffusion coefficient)低値を示すことが水腫との鑑別できわめて有用である。
髄液検査に炎症が反映されないことが多く,腰椎穿刺による脳ヘルニア惹起の危険性もあり,禁忌である。
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