政府は21日の臨時閣議で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2019」を決定した。社会保障分野では昨年に引き続き、団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年頃を見据え「全世代型社会保障」の実現を掲げた。医療・介護に関しては、予防・健康づくりについて個人のQOL向上だけでなく、社会保障の支え手となる就業者の増加や健康格差の拡大防止などの意義を認めた上で、保険者・自治体による予防・健康インセンティブの強化を進めるとした。
一方、社会保障の「給付と負担」の見直しに関する具体策は、7月の参議院議員選挙への影響を避けて盛り込まれず、来年の「骨太方針2020」に向けて重点施策を検討することとされた。茂木敏充経済再生相は閣議後の会見で「給付減か負担増かという単純な議論ではなく、両者を極力抑え、社会保障や財政の持続可能性を確保する前向きな政策体系を探っていきたい」とした上で、夏の20年度予算概算要求など予算編成に向けた作業の後に「できる限り速やかに議論をスタートしたい」と述べた。
骨太方針2019では、40年までに男女とも健康寿命を3年以上延伸し、75歳以上にすることを目指すとした。また、ICTの活用やタスクシフティングを通じて、40年における医療・福祉分野の単位時間当たりのサービス提供量を5%(医師は7%)向上させる目標を打ち出した。
疾病・介護予防の重点施策では、地域医師会と連携するなどして特定健診の実施率向上(23年度までに70%)を図るほか、働き盛り世代の特定健診・がん検診受診率向上を目指す。また、レセプトに基づく患者の医療情報を本人や全国の医療機関で確認できる仕組みに関し、特定健診情報は21年3月をメド、薬剤情報は21年10月をメドに稼働させるとした。
医療提供体制の改革については、「地域医療構想の実現」「医師偏在対策」「医療従事者の働き方改革」の“三位一体”で総合的に進めると明示した。
地域医療構想については、公立・公的医療機関が担う機能が民間医療機関では担えない機能に重点化され、構想に沿った医療機能の再編と病床数の適正化が実現されるよう、国が「重点対象区域」を設定して助言と支援を行う方針を示した。病床ダウンサイジングが構想の実現に必要と判断された場合には、消費税財源を活用した追加支援も講じるとした。
医師の地域・診療偏在の解消に向けては、地域の医療ニーズや医師の性・年齢分布などを織り込んだ「医師偏在指標」を活用し、是正を進めるとした。医師養成課程については、22年度以降の医学部定員の減員に向けて定期的に需給推計を行った上で養成数の方針を検討するとした。プライマリ・ケアへの対応強化では「改正医師法に基づき、総合診療専門研修を受けた専攻医の確保数について議論しつつ、総合診療医の養成を促進する」との方策が示された。原案になかった「診療能力向上のための卒前卒後の一貫した医師養成課程を整備する」との一節も加筆された。