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坪井信道(8)[連載小説「群星光芒」186]

No.4773 (2015年10月17日発行) P.68

篠田達明

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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  • 「おまえの身勝手をこれ以上受け入れることはできぬ。わしの我慢もここまでだ」

    浄界の怒気はこめかみから首へと広がり首筋の血管がひくひくと怒張した。

    「三度も固い約束を破られてはもう勘弁ならん。わしの堪忍袋はおまえの放埒に打ち砕かれた。もはや兄でもなければ弟でもない。さっさとここを出てゆけ!」

    「兄上……」

    「うるさい!おまえとは生涯会わぬ。二度とわが山門をくぐるな!」 

    怒り狂った浄界は荒々しく座布団を蹴ると方丈を出ていった。あまりに強い兄の憤りに取り付く島もなかった。

    兄に勘当を申し渡された信道は肩を落として悄然と高貴寺を去った。

    帰路、豊後で修業していたとき兄の便りを目にして詠んだ漢詩が瞼に泛んだ……。

    細察字字愁(見れば文字に愁あり)
    語切頻拊膺(文面切なく頻に胸打つ)
    涙零湿敞裘(涙破衣を濡らす)
    生作兄与弟(生れながらの兄弟)
    分離別旧丘(裂て古都で別る)
    吾為西海客(吾九州の旅人となり)
    汎汎一葉舟(舟足速む一艘の小舟)
    良朋真難得(良き友は真に得難く)
    斯道豈易求(儒学の道も易からず)
    不言風霜苦(世の苦難は厭わずも)
    丹心恐不酬(兄に酬いぬを恐る)

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