【集学的に診断・治療を行うべき時が到来したと考える】
国民の2人に1人が,がんになると言われる現在,整形外科もがんの骨転移に対する診断や治療に携わるべき時代が到来したと考える。がんの診断や治療の進歩で生命予後は向上し,骨転移を有しながら長期生存することも可能となり,患者数は増加している。
病的骨折や脊髄麻痺を生じると強い疼痛や排尿排便障害まで生じてQOLを著しく低下させるので,早期に診断し治療介入を行い,骨関連事象を予防するのが基本となりつつある。具体的には多職種のメンバーからなる骨転移キャンサーボードの導入による治療介入である。放射線科や整形外科が中心となって行う画像診断,骨折,麻痺出現前の放射線治療や腫瘍内科を中心とした薬物治療,リハビリテーション医によるリハビリテーションと装具療法,緩和ケア医や臨床心理士,看護師などによる肉体的精神的疼痛緩和など,総合的に関わっていくことが重要である。
転移性骨腫瘍に対する骨修飾薬(デノスマブ,ゾレドロン酸)の使用により,骨折や脊髄麻痺を生じる例は減少した。また,放射線治療に関しても強度変調放射線治療や陽子線治療などの新しい手法,脊椎手術に関しても経皮的椎弓根スクリュー刺入やナビゲーションの導入など,低侵襲手術も積極的に行われている。転移性骨腫瘍に対して整形外科や放射線診断科,放射線治療科,腫瘍内科,リハビリテーション科などが集学的に診断・治療を行うべき時が到来したと考える。
【参考】
▶ 日本臨床腫瘍学会, 編:骨転移診療ガイドライン. 南江堂, 2015.
【解説】
馬場一郎 大阪医科大学整形外科講師