子どもの貧困が注目されたのは2008年。10年以上経過したが、問題解決への道のりは遠い。日本外来小児科学会「子どもの貧困問題検討会」の代表世話人を務める和田浩氏に話を聞いた。
2009年に岩波新書の「子どもの貧困─日本の不公平を考える」(阿部彩著)を読んだところ、7人に1人の子どもが貧困だと書いてありました。ところが、私の患者さんの中でそれと思い浮かぶ人が1人もいなかったのです。貧困を抱えている人はいないのではなく、私に見えていないだけなのだ。どうしたらそれは見えるようになるだろうかと考えて、2010年の日本外来小児科学会でワークショップ「子どもの貧困を考える」を開きました。
そこで参加者から、「定期通院に来ない患者の背景に貧困が潜んでいる」と指摘があり、それを聞いた時に「そう言われればあの一家はそうかも」と思い当たる患者さんがいました。喘息で定期通院が必要なのに、中断を繰り返し、発作を起こすと受診する―。思い切って理由を尋ねてみると、経済的に厳しいという事情を明かしてくれました。ほかの患者さんに対しても少し突っ込んで話を聞くようになると、貧困を抱えている子どもがたくさんいる実態がみえてきました。