日本感染症学会は8月28日、「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言」を公表した。ウイルス感染症に細菌感染症が続発しやすい高齢者や基礎疾患を有する患者も含めた抗菌薬適正使用に関する考え方を解説している。
厚生労働省が2017年に策定した「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」は、基礎疾患のない成人および学童期以降の小児を主な対象としており、ウイルス感染症に抗菌薬を投与しないことを推奨している。気道感染症で抗菌薬を考慮するケースには、中等症以上の急性鼻副鼻腔炎や、迅速抗原検査または培養でA群β溶血性連鎖球菌が検出された急性咽頭炎を挙げ、ペニシリン系のアモキシシリン水和物内服を第一選択としている。
感染症学会の提言では、薬剤耐性(AMR)対策の推進を大前提とした上で、①急性鼻副鼻腔炎、②急性咽頭・扁桃炎、③急性気管支炎―について、プライマリ・ケアの実臨床における診療アルゴリズムとともに、抗菌薬治療が推奨されるケースや治療薬の選択肢を示している。
例えば急性気管支炎では、細菌感染の頻度や基礎疾患の増悪リスクなどを考慮し、基礎疾患の有無別に抗菌薬治療の考え方を提示。基礎疾患がないまたは軽微である場合は原則不要だが、慢性肺疾患やコントロール不良の糖尿病などの基礎疾患がある場合は考慮するとしている。急性鼻副鼻腔炎と急性咽頭・扁桃炎では、アモキシシリンによる治療が失敗した例に対する第二選択抗菌薬の備えが必要性であることも説いている。
提言は感染症学会ホームページ(http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=34)のほか、「感染症学雑誌」第93巻5号に掲載されている。