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①寄生虫:マラリア[特集:わが国で注意が必要な“熱帯病”]

No.4976 (2019年09月07日発行) P.20

狩野繁之 (国立国際医療研究センター研究所熱帯医学・マラリア研究部部長)

登録日: 2019-09-09

最終更新日: 2019-09-04

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【日本での流行予測】

【ワクチン】

 

1 世界の発生動向

ランセット誌に,2000~17年の間に,世界の三日熱マラリアの罹患者数が41.6%減少して1430万人になったと報告された1)。同時期に,熱帯熱マラリアの罹患者数は27.9%減少して1億9390万人に,死亡者数は42.5%減少して61万8700人と報告された2)。しかしながら,アフリカのサブサハラに居住する人々が,罹患者数の79.4%,死亡者数の87.6%を占めていることが特記される。世界保健機関(WHO)は,2015~17年の世界のマラリア患者数の若干の増加を憂慮している3)

2 媒介生物

マラリアは,ハマダラカ属(Anopheles)の蚊の吸血で伝搬される疾患である。世界のおよそ460種のハマダラカ属のうち,40種ほどがメインベクターとなって流行地それぞれに特有な分布をしている。そのうち,タテンハマダラカ亜属(Cellia)が216種,ハマダラカ亜属(Anopheles)は206種で,わが国には前者ではコガタハマダラカ(An. minimus)など2種,後者ではシナハマダラカ(An. sinensis)など10種が棲息する。コガタハマダラカは琉球列島を中心に分布し,1960年までは熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の主な媒介蚊となっていた。シナハマダラカは本土に広く東北地方まで分布しているが,三日熱マラリア原虫(P. vivax)の好適な媒介蚊である。

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