日本医療政策機構と感染症関連学会、医薬品・医療機器関連企業などで構成する「AMRアライアンス・ジャパン」は10月7日、抗菌薬セファゾリンの供給停止問題を受け、緊急フォーラムを開催した。講演した具芳明氏(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター)は、問題の対応策として政府による抗菌薬の需要予測などの実施を提案した。
周術期管理などに用いられるセファゾリンを巡っては、海外原薬製造企業のトラブルで、汎用規格で国内シェアの6割を占める日医工製品の供給が停止し、需要が急騰した代替抗菌薬も連鎖的に出荷調整となる事態に陥った。
抗菌薬の供給に関する世界的な動向について講演した具氏は、「このような状況が起きているのは日本だけではない。米国では2001年~13年までに148品目の抗菌薬が不足したとの報告がある」と説明。「抗菌薬不足は、最適でない感染症治療につながる」と危機感を示した。具体的には、「2017年にタゾバクタム・ピペラシリンが世界的に不足した際、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)が増えた」との報告を紹介した。また欧州で行われた病院薬剤師へのアンケート調査の結果によると、抗菌薬不足の影響として「効果の劣る代替薬を使用せざるをえなかった」「医療上のエラーが起きた」「治療の遅れが生じた」などの事態が生じていたとして、問題視した。
具氏は問題の対応策として、「供給不足の早期察知と対応が重要」と指摘。▶政府による基本的な抗菌薬の需要予測、▶情報共有の早期実施、▶リスクアセスメントの仕組みづくり―を提案した。
また、「薬価が引き下げられすぎてしまえば、企業は撤退の判断をせざるをえないだろう」との考えを示し、「長期的には、薬価の考え方も含めてビジネスモデルを変える必要がある」と指摘した。
具氏は、「国際的な解決策はまだ示されていない」として、「日本がリーダーシップをとって取り組みを進めていくきっかけになればいい」と期待を込めた。