中央社会保険医療協議会・総会が11月27日開かれ、支払・診療側がそれぞれ、「第22回医療経済実態調査」の結果に対する意見を述べた。支払側は、国公立病院の減価償却費率や人件費率の高さに強い問題意識を表明。診療側は一般病院および一般診療所の3分の1が赤字であることを示し、このままの状態が続けば医療の質の低下を招きかねないと危惧した。
支払側は幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が代表として、健保連の実調の分析結果を報告した。それによると一般病院全体の2018年度の損益差額率は1.6%の赤字だが(以下、いずれも加重平均値)、国公立を除けば1.5%の黒字。医療法人は2.8%の黒字であるのに対して、国立は▲2.3%、公立は▲13.2%といずれも大幅な赤字で、これらが一般病院全体の平均を押し下げていると指摘した。その原因は給与費と減価償却費の高さにあるとし、国公立の医業・介護費用の収益に対する比率は、それ以外の一般病院に比べて、給与費率が4.1ポイント、減価償却費率が2.5ポイント高いことを示した。
また一般病院の労働分配率は、どの開設主体でも7割を超えるが、公立は90.1%と突出して高く、これが赤字の最大の要因との見方を示した。だが、主な医療従事者の平均年収の経年変化では、看護職員以外ほぼ横ばいとなっていることから、幸野委員は、「プラス改定が行われても従事者の給与には反映されていない」と厳しく批判した。
一般診療所については、個人・医療法人とも有床無床に関わらず黒字だったとし、損益差額率は全体的な傾向として前回調査から横ばいで推移しているとした。
一方、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、今回の実調結果で、医療法人立の一般病院と一般診療所の3分の1が赤字となったことを憂慮。一般診療所の損益差額率が一般病院よりも高いとの意見には、「損益差額の計算式が異なるので単純には比較できない」と反論した。特に、地域包括ケアシステムの要である「在宅療養支援診療所(在支診)」の損益差額率が在支診以外に比べて低いことや、減価償却費と設備関係費の合計比率が一般病院の全開設者で低下し、設備関係コストの抑制がうかがわれる点に懸念を表明。
現在のような経営状況が続けば、「医療従事者の確保に困難を来たし、医療サービスの質の低下を招く恐れがあるばかりか、医療技術の進歩などによる医療の質の向上にも対応ができない」と訴えた。
12月上旬の総会には、20年度診療報酬改定に向けた各側の意見書が提出される予定。