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特集:疥癬マニュアル

No.5001 (2020年02月29日発行) P.18

和田康夫 (赤穂市民病院皮膚科部長)

登録日: 2020-02-28

最終更新日: 2020-02-27

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1993年京都大学卒業。同年京都大学皮膚科学講座入局。日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員

1 なぜ疥癬が問題なのか?
疥癬が問題となる理由は3つある。①感染すること,②治療をしないと治らないこと,③診断が難しいことである。
1つ目に,疥癬は伝染性疾患である。病院や施設内で集団発生を引き起こす恐れがある。2つ目の難点は,治療をしないと治らないことである。疥癬は,インフルエンザのように一定期間,隔離をすると自然と感染拡大がおさまるという類いのものではない。3つ目として,診断が難しいことである。原因となるヒゼンダニは0.4mmくらいと微細で,見つけることは難しい。
しかし,悲嘆することはない。疥癬には,有効な治療薬がある。診断さえつけば,治療は比較的容易である。疥癬の発症機序を知り,確定診断の術を身につけると,疥癬治療は恐くなくなる。

2 疥癬の発症機序を知っておこう
疥癬の発症機序は,ヒゼンダニが皮膚に寄生することにより生じる。ヒゼンダニは皮膚角質層の中を水平に掘り進みながら生息する。それが皮膚表面上に,線状の畝のように盛り上がった皮疹として見える。これを疥癬トンネルという。疥癬トンネルは,ヒゼンダニの生涯の棲み家であり,疥癬トンネルが見つかると,その中からヒゼンダニが見つかる。疥癬トンネルは,特に手や足に生じやすく,また,体幹には,おびただしい数の搔破痕が生じる。これは,ダニに対するアレルギー反応によって生じると考えられている。体幹部の搔破痕から,虫体が見つかることは稀である。

3 ここを押さえる!確定診断への手順
疥癬の確定診断は,ヒゼンダニ虫体を見つけることである。疥癬トンネルは,手や足に生じやすい。手や足の5mm前後の線状皮疹を探す。線状皮疹が見つかれば,その盲端に虫体が潜んでいる。ヒゼンダニ虫体は,口器と前脚が黒褐色をしており,肉眼で微細な黒点として見える。線状皮疹の端に微細な黒点があれば,それがヒゼンダニの可能性がある。

4 疥癬治療の落とし穴
疥癬治療の落とし穴は,薬剤は虫卵には効かないこと,塗り残しがあると再発することである。
薬剤として,イベルメクチン内服とフェノトリン外用があるが,いずれもダニには有効であるが,卵には効果が乏しい。卵がふ化する頃合いを見計らって再投与が必要となる。再投与は1週間後が推奨されている。フェノトリン外用の注意点として,首から下の全身に塗布することであり,痒いところだけに塗っても完治に至らない。塗り残しがあると,その部位のダニは死なないからである。

5 専門医療期間ではここまでできる!
疥癬診療で一番やっかいなのが,集団発生のときである。角化型疥癬(ノルウェー疥癬)の隔離治療や,感染の広がりがどこまであるのか,感染は終息していくのか,専門医療機関の協力を得て,対策を講じることが望ましい。

6 患者目線で考えるこれからの疥癬診療
疥癬患者は,目に見えないダニが自分の体にいると思うだけで,ノイローゼのようになる。疥癬は治るのか,掃除はどうしたらよいのか,それを気に病み日常生活にも支障をきたすようになる。原因となるダニは皮膚角質層以外の環境では生息できない。患者一人ひとりをしっかり治療するだけで治癒が見込める。

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