汗疱・異汗性湿疹は手掌や手指,足底に小水疱を多数認める疾患で,しばしば瘙痒を伴い,改善とともに落屑を認める。夏季や季節の変わり目に多くみられ,汗との関連が疑われていたが,現在では否定されており,手湿疹の一型と考えられている。
手掌や手指,足底に0.5~2mm大の小水疱が繰り返し出現する。左右対称性で,治癒すると落屑がみられる。以下の,臨床像が酷似する疾患を除外する必要がある。
汗疱状白癬:白癬菌感染により炎症を起こした状態で小水疱を認める。検鏡で真菌が検出される。
掌蹠膿疱症:手掌,足底に小水疱,膿疱を形成する。足底は土踏まずのところに皮疹を形成しやすい。膿疱は無菌性で,培養検査で陰性となる。臨床上土踏まずに膿疱を認めた場合,本疾患と診断しやすい。また,胸鎖関節などに関節痛を伴うこともある。
接触皮膚炎:臨床上,鑑別は困難である。左右非対称であれば,皮疹のある側でのみ接触するもので生じている可能性を考える。疑わしいものがあれば,積極的にパッチテストを行い診断し,原因物質を除去する。
基本的に外的刺激を緩和することと炎症を抑えることが,治療の主体となる。水疱を形成しているときが最も炎症を起こしている時期なので,積極的にステロイド外用薬による治療を行う。水疱が潰れ落屑がみられる状態では皮膚のバリアが損なわれているため,保湿外用薬で保護する。改善が悪い場合は,段階的にステロイド外用薬の強度を上げていく。もともと掌蹠は角層が厚くステロイド外用薬の吸収は悪いため,通常使用するステロイド外用薬よりも強いものを使用する。角層が固くなっている場合は,尿素系保湿薬やサリチル酸含有軟膏など,角質軟化作用のある保湿外用薬を用いる。また,これらの角質軟化作用のある保湿薬とステロイド外用薬を併用することでステロイド外用薬の吸収が促進される。難治例ではシクロスポリン内服や紫外線療法を考慮するが,いずれも保険適用外である。
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