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クリニック向けMRIを活用し手術・保存療法に偏らない患者本位の治療を提供[クリニックアップグレード計画 〈医療機器編〉(18)]

No.5004 (2020年03月21日発行) P.14

登録日: 2020-03-23

最終更新日: 2020-03-23

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技術革新による医療機器の進化は目覚ましく、費用対効果にすぐれたクリニック向けの高機能検査機器が次々に登場している。地域のクリニックで病院レベルの検査を受けることができれば、通院による患者の負担は減り、医師の診断に対する信頼感が増す効果も期待できる。シリーズ第18回は、X線やエコーに加え、MRIを活用して患者の症状とニーズを理解し、保存治療や手術治療に偏らない治療に取り組む整形外科クリニックの事例を紹介する。

 

福岡県糟屋郡のJR鹿児島本線新宮中央駅前にある秋山クリニックは、整形外科やスポーツ整形外科、リウマチを専門領域とする秋山武徳院長が2014年に開業した。秋山さんは琉球大を卒業後、九州大整形外科に入局、麻生飯塚病院や浜の町病院などで整形外科医としてのキャリアを積んだ。

この間、変形性膝関節症に対する関節温存手術法である高位脛骨骨切り術の欠点を補った新しい術式「粗面下脛骨骨切り術」を開発。同術式は、O脚に変形し痛みがある状態から、自分の骨を切り角度を変えX脚にすることで痛みを取り除く高位脛骨骨切り術のメリットに加えて、膝蓋大腿関節にも優しい術式で、最近注目を集めている。秋山さんは適応患者には提携病院で自ら手術を行っており、大学病院など全国の医療機関から整形外科専門医が見学に訪れている。

高度な画像診断で的確な治療法を選択

秋山さんの診療方針は、まず患者の症状とニーズを的確に理解し、患者と一緒に最良の治療方法を選択するというもの。提携病院で入院が必要な手術を担当するほか、クリニックでも膝関節、肩関節、股関節などの日帰り手術を実施しているが、手術や保存療法ありきではなく、あくまで症状やニーズを踏まえ、最良の医療を提供することを心がけている。

「一般的に大病院では手術治療が優先され、保存療法は軽視される傾向があります。一方、クリニックでは手術が必要な患者さんでもリハビリ、注射などの保存的治療を延々と続け、手術のタイミングを逸することも少なくありません。当院では、極力手術をしなくて済むように対応しながら、手術が必要な場合にはタイミングを逸しないように心がけています。また保存療法や手術を最高の技術で提供できるように、性能の高い検査機器や10人以上のPTを配置するなど環境を整え、常に患者さんとコミュニケーションを取りながら医療を提供しています」

同院ではこうした理念に基づき、高度な画像診断を行うため、開業時からMRIを導入している。

MRI所見は医師・患者双方の安心につながる

同院が導入しているのは日立製作所の永久磁石方式オープンMRI装置「AIRIS」シリーズの「Soleil」(現在は販売終了)。オープンタイプMRIのため、クローズドタイプにはない前方210°、後方70°という開放性を確保。撮像音も一般的な水平磁場式超電導MRIに比べると小さく、検査に対する患者の心理的負担が少なくて済むという特徴がある。

撮影画像については、静磁場強度が0.25T(テスラ)でありながら永久磁石素材を高効率に活用することで、これまでの0.3Tの装置と同クラスの画質を実現した。永久磁石装置は超電導磁石装置に比べ漏洩磁場範囲が狭く、撮像室をコンパクトにすることが可能で、機械室も必要ない。消費電力の少ない小さな電源設備で運用できることから、初期の設備投資費用と月々のランニングコストの負担が比較的小さく、クリニックでも導入しやすいMRIと言える。AIRISシリーズのMRIを導入した理由について秋山さんはこう語る。

「オープンタイプのMRIを探していたのですが、日立のMRIは、0.25Tでも想像以上に画質がよく、操作もシンプルで使いやすいことや、維持費がそれほどかからずコストパフォーマンスに優れているところなどが決め手になりました。整形外科一般の病態を把握する上でMRIの所見はとても重要です。例えば腰椎の椎間板ヘルニアなどで神経に問題がある場合、X線で分からない詳細な病態の情報をMRIなら把握することができ、すぐに有効な治療を開始できます。それなりにコストはかかりますが、MRIがあると情報量が格段に増え、医師と患者さん双方の安心につながるというメリットは大きいと考えています」

MRIで診断のクオリティは格段に向上する

Case①は、いずれもMRI画像を基に治療法を決定した症例。

Case①は、バスケットボールのプレイ中に右膝を捻挫した17歳女性の画像。MRIで右膝前十字靭帯断裂と診断し、鏡視下前十字靭帯再建術を実施した。現在は痛みもなく、バスケットボールに復帰している。 Case②は、左膝を捻挫した28歳女性の画像。MRIで左膝内側半月板ロッキングと診断、すぐにロッキングした半月板を徒手整復した。後日、鏡視下半月板縫合術を施行した。

「オープンMRIは、痛みがある患者さんでも撮影がしやすく、画像で問題が見つかればCase②の女性のように、徒手で整復してから手術、という的確な治療につなげることができます。もちろんすべてのクリニックにMRIが必要とは思いません。しかし整形外科に限らず、専門性の高い診療をしていきたいという先生には有用なツールだと思います。MRIは高価ですが、クリニックのホームページや口コミを通じて『あのクリニックならMRI検査ができる』と伝わっていくことで患者さんの増加にもつながります。コストパフォーマンスにすぐれたMRIであれば、十分採算が取れるようになると思います」(秋山さん)

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