2020年4月1日から診療報酬体系が改定された。医療従事者の負担軽減に関する見直しや要件緩和の項目が目立つが、それ以外のポイントは大きく分けて①急性期病床の絞り込み、②病院・病棟機能の適正化、③より高度な医療への評価、④在宅医療の拡大、⑤リハビリテーション機能の評価─の5つであろう。
我も我もが「うちは急性期病院だ」という意識が強く、93.5%の病棟が急性期一般入院料1を届け出ていた。今回は重症度、医療・看護必要度の基準および該当患者割合の変更により、現在急性期一般入院料1を算定している病棟を30%以上減らすことができるかもしれないくらいの、ポイントを突いた改定であった。公平に判断すれば、30%近くの病棟が急性期一般入院料2以下に分散されるかもしれないが、各病院においてさまざまな方策を講じて抵抗してくるので、ひょっとしたら10%未満しか減らない可能性もある。しかしいくらあがいても、その地域におけるこれらの病院の評価は、地域住民によって既に下されている。その結果としての実質的下落は避けられないと悟るべきである。
一方で救急受け入れ患者数などで峻別し、高度急性期病院には高評価を与えた。そして地域包括ケア病棟を有する病院は、地域急性期病院としての役割を果たすよう在宅医療の条件を変更している。これは地域の多機能な病院である地域包括ケア病棟に、地域の急性期から慢性期、在宅機能まで包括して担当させ、従来の大規模急性期病院内での病棟移動で取り繕おうとする病院群に、地域包括ケア病棟を取得できないように意図しているのだ。
また、急性期から慢性期まで患者の高齢化は著しく、病期に関係なくリハビリテーションが必要であることから、アウトカムを評価した、より手厚いリハビリテーションの提供を進めようとしている。
従って現在の4つの病院・病棟の機能分類は無意味となりつつある。そして病院は今後10年間に「急性期病院」「地域多機能病院(急性期型)」「地域多機能病院(慢性期型)」の3つに大別されるだろう。2020年度診療報酬改定は、ある意味で新しい病院改革の緒についたと考えるべきである。
武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[診療報酬]