株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

副鼻腔真菌症[私の治療]

No.5009 (2020年04月25日発行) P.51

朝子幹也 (関西医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2020-04-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 一般的に,慢性副鼻腔炎は両側性の疾患であるが,副鼻腔真菌症は片側性疾患であり,副鼻腔腫瘍などと鑑別を要することがある。副鼻腔真菌症は浸潤型と非浸潤型にわけられ,真菌の病態への関わり方がまったく異なる。浸潤型は免疫不全を背景に病原菌として関わり,重症化しやすい。最も多くみられるのが慢性非浸潤型である。真菌が寄生体として病態に関わり,副鼻腔内に真菌塊として存在する。非浸潤型にはアレルギー性真菌性副鼻腔炎(allergic fugal rhinosinusitis:AFRS)も含まれ,真菌がアレルゲンとして関与し,局所に好酸球浸潤を認め,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症と共通点が多い病態である。各々治療の根本的な方針が異なる。

    ▶診断のポイント

    CTによる画像診断が有用である。最終的な診断は培養検査ではなく,病理検査による。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    副鼻腔真菌症は,その病態によって治療方針が異なるので,鑑別診断が重要である。原因真菌として最も多いのはアスペルギルスであり,カンジダ,ムコールもそれぞれ10%程度認められる。

    浸潤型ではアスペルギルスフミガタスやムコールの報告が多い。いずれも生活環境中に生息していることが多く,患者の住居や職場,周辺環境に曝露要因があることが多く,治療後も再発傾向がある。

    最も一般的な慢性非浸潤型真菌症の画像診断上の特徴は,患側の骨肥厚と石灰化像である。一般的な副鼻腔炎と異なり片側性であることが多く,良性鼻副鼻腔腫瘍などと鑑別を要する。病理検査では真菌塊を認めるが周辺の粘膜へ浸潤することなく,孤立して存在し,真菌に寄生された状態である。臨床症状としては片側の鼻閉,膿性鼻汁,悪臭である。

    一般的な慢性副鼻腔炎に有効であるマクロライド少量長期投与の効果は限定的であり,基本的には寄生している真菌塊の除去(手術治療)が治療の主体である。手術のエンドポイントは,一般的な慢性副鼻腔炎が副鼻腔の再換気の獲得であるのに対し,慢性非浸潤型真菌症では真菌塊の完全除去であり,真菌塊を取り残すと再発しやすい。また,もう1つの非浸潤型真菌症であるAFRSでは必ずしも真菌塊を示唆する石灰化像がなく,粘膜肥厚像とムチンの貯留により,軟部組織条件で副鼻腔内に閾値の異なる二層性像を呈する。保存治療ではステロイドが著効することが多く,効果がみられない場合には手術加療を要する。

    AFRSにおいてはムチン内に好酸球の浸潤やシャルコーライデンクリスタルが存在することが多い。アスペルギルスなどに対する真菌特異的IgE抗体陽性であり,血清好酸球数が高い。気道粘膜局所における好酸球性炎症が病態の主体であり,下気道におけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症と同様な病態と考えられる。

    浸潤型真菌症は免疫不全の状態にあることが多く,画像上も真菌塊を伴わないことも多く,周辺組織への浸潤像を認め,副鼻腔癌と鑑別が困難な像を呈する。血清学的検査ではβ-D-グルカンが高値を示す。最終的な診断は手術による介入で,病理的診断を行い,真菌の鼻副鼻腔粘膜への浸潤を確認する。脳などの中枢神経系への浸潤は致死的な経過をたどることもあり,また,視器への浸潤では失明のリスクが高いため,浸潤型真菌症の診断がつけば速やかに治療を行う。治療は病巣部位の手術的郭清と,全身的な抗真菌薬をβ-D-グルカンなどを指標にして継続投与する必要がある。

    残り507文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top