1 超高齢社会の到来と骨折治療のパラダイムシフト
①「平成」は,整形外傷の軸足が若・壮年者の重度四肢外傷から高齢者の脆弱性骨折へと急速にパラダイムシフトした時代
②高齢化率:65歳以上の高齢者人口/総人口(%)
1945(昭和20)年5%未満(終戦直後)
1970(昭和45)年7%:高齢化社会
1994(平成6)年14%:高齢社会
2007(平成19)年21%:超高齢社会
③労働災害・交通事故が減少,脆弱性骨折が増加
2 大腿骨近位部骨折(hip fracture)とは
①大腿骨近位部骨折≒大腿骨頸部/転子部骨折
②脆弱性骨折:立った位置からの転倒程度の低エネルギー損傷で生じる骨折
3 大腿骨近位部骨折の診断
①典型的な病歴:高齢者,転倒,臀部痛,起立不能,介護骨折
②典型的な身体所見:スカルパ三角の圧痛,他動的股関節痛
③画像検査:両股関節正面像+軸位像,不顕性骨折(occult fracture)がある。
④不顕性骨折の診断:MRIとCT
4大腿骨近位部骨折の分類と治療
①生命予後・機能予後ともに保存療法より手術療法がよい
②わが国では,大腿骨近位部骨折の95%以上に対して手術療法を選択
5 大腿骨頸部骨折の分類と治療
①非転位型と転位型の2群分類
②内固定術後の局所合併症:偽関節,骨頭壊死,遅発性骨頭圧潰など
③非転位型:整復内固定術が第一選択,cannulated screw,pin,SHSなど
④転位型:人工骨頭置換術が第一選択,暦年齢・身体年齢が若ければ人工股関節全置換術(THA)を行う場合もある
6 大腿骨転子部骨折の分類と治療
①AO/OTA包括分類
②整復内固定術が第一選択
③固定材料としては,髄内釘かSHS
④治療失敗=整復喪失&ラグスクリューのカットアウト
⑤整復位とラグスクリューの至適位置:内反股は不可。ラグスクリューは,center-centerでTAD 25mm以下をめざす
7 生命予後・機能予後,リエゾンサービス
①わが国では,術後1年での死亡率は10%前後。欧米の約半分
②生命予後:男性,高齢,受傷前の低い歩行能力,認知症,長期入院,心疾患,BMI低値があると悪い
③受傷から手術までの期間:欧米では48時間以内の手術が常識。わが国では,平均4.1日(2018年)
④機能予後:受傷前に屋外歩行自立していた患者の移動能力維持率は約50%
⑤急性期病院,回復期リハビリテーション病院,施設・自宅をつなぐ地域連携パスは有用