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神経痛性筋萎縮症

No.5018 (2020年06月27日発行) P.49

園生雅弘  (帝京大学脳神経内科主任教授)

登録日: 2020-06-29

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 【もはや「腕神経叢ニューロパチー」ではない】

神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy:NA)は,1948年ParsonageとTurnerが報告した疾患で,突然の肩~上肢の激痛で発症し,その後上肢帯を中心とする弛緩性の麻痺を呈する。72年のMayo Clinicからの論文で腕神経叢ニューロパチーの名称で報告されたことから,一般には腕神経叢疾患であると信じられてきた。一方,多発性単ニューロパチーであるという意見も根強く呈されていた。これとは別に,わが国の手外科医たちが90年代以降,NA類似の臨床像を呈する特発性前骨間ないし後骨間神経麻痺を記載し,特に神経超音波で末梢神経本幹部分に砂時計様のくびれがみられることを報告してきた。近年,通常の近位型のNAにおいても腕神経叢以遠の末梢神経幹に同様のくびれが画像で示され,NAが腕神経叢ニューロパチーではなく,多発性単ニューロパチーであることがほぼ確定された。免疫学的機序が想定されているが,その原因は不明である。神経再生が起こるので予後は比較的良い。

わが国では,頸椎症性筋萎縮症(CSA)が重要な鑑別疾患であり,自験例での頻度はCSA:NAは9:1程度でCSAのほうが圧倒的に多い。鑑別点は,CSAは正確に髄節性の障害分布を呈するが,NAはそうではなく,多発性単ニューロパチーの分布を呈することである1)

わが国では多くのCSA例がNAと誤診されている可能性がある。CSAは急速回復する一部例を除けば一般に予後不良なので,両者の鑑別は重要である。

【文献】

1) 園生雅弘:脊椎脊髄ジャーナル. 2018;31(5):460-5.

【解説】

園生雅弘 帝京大学脳神経内科主任教授

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