【質問者】
松本晃明 静岡県立総合病院精神診療部長
【行動表出や会話形式と問診を総合して診断。非薬物療法の比重が大きい】
成人のASDでは,本人診察で行動表出や会話形式を評価します。発達歴や他者評価のために,主な養育者や同居家族からの問診もできるだけ行い,診断確定後の理解獲得や支援体制の構築にも結びつけます。併発診断となる抑うつや不安については,表情や口調に変化が現れにくいこともあり,表出は淡々としていても睡眠や食欲や興味・関心の変化や体験内容から総合的に判断して診断することも必要になります。精神的変化を自覚せず身体化することも多いです。
筆者は,初診の時点でさらに心理検査や養育者からの問診を行う必要があるかを判断しています。その上で,診断を伝える際は,「得意・不得意がはっきりとしているため,状況による向き・不向きもはっきりしていること」「特性を理解し,得意な面を活かす方策を考えていくことが,今後の重要なテーマであること」も明確に説明します。家族や上司にも,ASDに共通した特徴として,「共同作業よりも,分担の明瞭な仕事に自分のペースで取り組むことで能力が発揮されやすいこと」を理解してもらいます。適した仕事内容は,知能検査の下位項目の成績なども参考に説明します。
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