厚生労働省は7月27日の社会保障審議会介護保険部会に、「第8期介護保険事業(支援)計画」においても介護・医療療養病床や介護療養型老人保健施設(転換型老健)から介護医療院などへの転換を総量規制の対象外とすることや、財政安定化基金を活用した市町村への財政支援策などを提案した。明確な反対こそなかったものの、委員から様々な意見が出たため部会長が引き取り、事務局と調整することになった。
介護医療院への転換促進策として、「第7期介護保険事業(支援)計画」では、介護療養型医療施設と医療療養病床が介護医療院などの介護保険施設や、地域密着特養、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護に移行する場合(転換型老健は介護医療院に移行する場合のみ)は、総量規制の対象から外す取り扱いとなっている。27日の部会で厚労省は今後も継続して転換促進を図る必要があるとして、第8期計画においても、これらのケースを総量規制の対象外とすることを提案した。
市町村への財政支援策として財政安定化基金を活用する案も示した。介護保険の給付対象ではない医療療養病床から介護医療院への転換については、第1号被保険者の保険料上昇への懸念から、市町村が転換を認めないケースがあるためだ。市町村は、保険給付が介護保険事業計画での見込みを上回り、介護保険特別会計に不足が生じた場合に、都道府県に設置された財政安定化基金から借り入れを受けることができる。借入金は、次の計画期間中の第1号被保険者の保険料に上乗せすることにより、3年間で返済する決まりになっている
ただ、想定以上の病床が介護医療院に移行し、多額の借入れが必要になった場合は、保険料が急激に上昇する恐れがある。このため厚労省は、基金への返済期間を1期計画期間(3年間)から3期計画期間(9年間)に延長し、保険料の上昇を平準化することを提案。地域医療構想の目標年である2025年に足並みを揃え、第8期(21〜23年度)と第9期(24〜26年度)限りの時限措置とする考えも示した。実施には政令の改正が必要になる。
委員から明確な反対意見は出なかったが、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長/香川県高松市長)は、「基金はあくまで貸付であり、返済しなければならない。財政調整交付金による実質的な支援を是非お願いしたい」と要請。椎木巧委員(全国町村会副会長/山口県周防大島町長)も、「保険料負担の平準化の点では良い案だが、保険料負担全体を軽減する案にはなっていない」との見解を示した。江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「こういう対応策を出す前に実態がどうであるかが重要だ」と指摘。実際に医療療養病床から介護医療院への転換を拒否された事例があるのかも含め、実態を把握する必要性を説いた。
また同日の部会では、「匿名要介護認定情報等の提供に関する専門委員会」の設置が了承された。健康保険法等の一部改正で、今年10月1日から匿名化された医療レセプト情報や要介護認定情報などの第三者提供が可能になることへの対応。専門委員会は介護関連情報の有識者を中心に構成し、第三者提供に関するガイドラインの検討のほか、データの提供申請があった場合にその可否を審査する。医療レセプト情報などの第三者提供に関する専門委員会については、医療保険部会が設置を了承済み。医療・介護のデータを連結して利用できる状態での提供申請があった場合は、2つの専門委員会が合同で審査することになる。