1 しびれ感を評価するための戦略
・しびれ感の部位から病変局在が推測できる。
・時間軸を加えて,原因を絞り込んでいく。
・上記をふまえた上で,検査を上手に使う。
2 しびれ感の部位から見た病変局在
しびれ感の部位によって,大まかな病変局在は予想可能である。
(1)顔面:脳≫末梢神経
・脳病変の多くは画像検査が有用である。
・末梢神経障害には,オトガイしびれ症候群,膠原病による三叉神経障害などがある。
(2)上肢:末梢神経or脊髄(頸髄)≫脳
・手根管症候群と頸椎症が2大原因である。
・手根管症候群では過小診断,頸椎症では過剰診断に注意する。
(3)下肢:末梢神経or脊髄(腰髄≫頸髄,胸髄)
・靴下型の多発ニューロパチー,腰椎症が原因として多い。
(4)四肢遠位:末梢神経
・いわゆる手袋靴下型の分布で,多発ニューロパチーが主な原因である。
・多発ニューロパチーの原因は多岐にわたる。
・筋力低下の合併の有無,急性~慢性のどのような経過をとるか,といった特徴を参考に診断を進める。最も多いのは,「感覚障害優位で慢性の経過」というパターンであり,糖尿病,ビタミンB12/葉酸/ビタミンB1欠乏症,甲状腺機能低下症,M蛋白血症などを中心に採血でのスクリーニングを行う。
(5)片側上下肢:脳≫脊髄(頸髄)
・脳病変,脊髄病変の可能性が考えられ,画像検査が有用である。
(6)体幹:脊髄or末梢神経
・脊髄病変(特に胸髄),帯状疱疹などであることが多い。
(7)四肢のばらつく分布:末梢神経≫脊髄
・多発性単ニューロパチーの可能性をまず考える。
・特に血管炎症候群では速やかな介入の必要がある。
・そのほかに,頸椎症と腰椎症の合併など,複数の脊髄病変が合わさって,このようなパターンをとることがある。
3 時間軸を意識する
・時間軸は原因を推測する手助けとなる。
・発症様式/経過が「超急性発症」「急性発症」「緩徐進行性」「再発・寛解(軽快)」「先行感染後」のいずれであるかで,鑑別に挙がる原因は大きく異なる。
4 危険なしびれ感を知る
・しびれ感のレッドフラッグに気をつける。レッドフラッグは,発症様式,しびれ感の経過,随伴症状で判断する。
・レッドフラッグのあるしびれ感は,専門家への速やかなコンサルトを考慮する。
5 診療にあたって念頭に置いて頂きたいこと
・まずは,しびれ感の部位から病変局在を推測する。
・時間軸を加えることで原因は絞られ,また必要な検査も決まってくる。
・レッドフラッグには注意する。
※より詳しく知りたい方は,拙著「ジェネラリストのための神経疾患の診かた」を読んで頂きたい。「物忘れ」「頭痛」「痙攣」「震え」「しびれ感」の5つの主訴について詳解している