右室から末梢肺動脈に至るいずれかの部位の肺動脈の狭窄であり,先天性心疾患の2~3%に認められる。Williams症候群やAlagille症候群などに合併する単独病変として,またはファロー四徴症,両大血管右室起始症,大血管転位症,単心室症などの複合先天性心疾患の合併病変として発生し,未手術の病変としてより,これらの疾患に対する術後の病変として問題になることが多い。未手術,術後を問わず肺動脈の各部位に発生し,稀ならず多発する。
単独病変では,肺野や背部に広く放散する駆出性収縮期雑音により気づかれる。他の先天性心疾患に合併する場合には,主たる疾患としての症状を呈する。
エコーウィンドウがよければ,左右肺動脈近位部までの狭窄は診断でき,ドプラ法により計測した血流速度から圧較差を推測しうる。三尖弁閉鎖不全を合併した場合には,その流速から右室圧を推定できる。
非侵襲的画像診断としてはMRIや造影CTが有用であり,3次元画像の構築や気管支,冠動脈,大動脈など周辺組織との位置関係評価は,治療方針を決定する上でも重要である。
血行動態評価のゴールドスタンダードは,心臓カテーテル検査である。
右室機能が正常な二心室循環では,狭窄部の圧較差20 mmHg以上,肺動脈狭窄により狭窄近位の肺動脈または右室収縮期圧が収縮期大動脈圧の70%以上,または狭窄がある側の肺血流量が健側の50%以下などの所見があれば治療の適応となる。
一方で,一心室循環や右室機能低下例では,狭窄による血行動態的影響を評価すること自体が困難な場合があり,狭窄の形態や肺血流分布の不均等などを総合的に判断して治療適応を決定する。
ほかに外科治療を必要とする病変がある場合や,近位部の肺動脈狭窄では外科治療が選択されるが,術後の遺残病変や肺内肺動脈の狭窄,多発性狭窄などではカテーテル治療が行われる。
カテーテル治療には,バルーン肺動脈形成術とステント留置術があるが,わが国では肺動脈狭窄の治療を目的として承認されたステントがないため,一次治療としてはバルーン肺動脈形成術が選択されることが多い。
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