No.5027 (2020年08月29日発行) P.10
吉本隆彦 (昭和大学医学部衛生学公衆衛生学講座/東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
川又華代 (東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座/央労働災害防止協会健康快適推進部)
松平 浩 (東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
登録日: 2020-08-27
最終更新日: 2020-08-26
SUMMARY
腰痛は,労働者の生産性を低下させる主要因である。痛みによる障害を整理し,仕事を妨げている要因を特定する上で有用なフラッグシステムを紹介する。簡便かつ合理的なセルフエクササイズとして,これだけ体操Rを推奨する。
KEYWORD
心理社会的フラッグシステム
痛みによる障害を,対象者本人,職場,社会環境に大別して整理するシステムである。医療者間および医療者と職場間で問題認識を共有する際にも有用である。
PROFILE
北愛知医科大学病院痛みセンター,亀田メディカルセンターで診療経験を積み,現在昭和大学医学部衛生学公衆衛生学講座の講師。理学療法士,博士(医学)。
POLICY・座右の銘
我以外皆我師
わが国における腰痛の生涯有症率は83.5%で,腰痛により仕事を含む社会活動を休んだことのある人は25%と報告されており,腰痛は国民病とも言える重要な健康問題である。
一方,企業において,労働者の健康問題による経済的損失は大きく,その内訳は医療・薬剤費よりもプレゼンティーズム(出勤しているものの,健康上の問題により生産性が低下している状態)による労働損失の占める割合が大きいとされている1)。我々は,2019年秋に行った1万人の労働者を対象としたインターネットによる全国調査において,腰痛がプレゼンティーズムの主要な原因であり,その労働損失額は約3兆円であることを明らかにした。つまり,腰痛対策は,個人の健康問題の改善だけでなく,生産性の向上といった企業へのポジティブな効果も期待されている。