リンパ腫は,リンパ系組織に発生する血液細胞由来の悪性腫瘍であり,小児がん全体の7~10%を占める。病型はホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)と非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma:NHL)とに大別されるが,わが国ではHLが年間約20例,NHLが年間約130例であり,欧米と比較してHLの発生頻度が低い。
小児のNHLの種類は限られており,成熟B細胞性リンパ腫〔びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)とバーキットリンパ腫(BL)〕,リンパ芽球性リンパ腫(LBL),未分化大細胞性リンパ腫(ALCL)で全体の90%を占める。
リンパ腫では,表在リンパ節腫大,縦隔リンパ節や胸腺腫大による気道圧迫,腹部リンパ節腫大によるイレウスや腸重積など,病変リンパ節腫大による症状や,胸水・腹水が現れる。このほか,リンパ節外浸潤,すなわち骨髄浸潤(貧血,血小板減少,正常白血球数の減少),中枢神経系(CNS)浸潤,肝脾腫,腎浸潤,皮膚浸潤などが生じうる。発熱や倦怠感が起こることもある。
緊急を要する病態(oncologic emergency)には,上大静脈症候群・上縦隔症候群(特にT-LBL),腫瘍崩壊症候群(リンパ腫細胞内容物の遊出による高尿酸血症,腎障害,高カリウム血症,高リン血症など。特にBL)などがある。
リンパ腫の診断には,病変リンパ節生検による形態診断が必須である。骨髄液や胸腹水で診断を代替できる場合もある。免疫診断(細胞系列に特異的な細胞表面抗原あるいは細胞質内抗原の検出),染色体・遺伝子診断(リンパ腫に特異的な染色体・遺伝子異常の検出)も併せて行う。また,リンパ腫細胞の全身への広がり(病期)を調べるため,CTやMRIなどの画像検査,脳脊髄液検査,骨髄検査も必要である。
リンパ腫に対する治療の主体は多剤併用化学療法である。化学療法後の残存病変に対して放射線治療を行うこともある。造血幹細胞移植は,通常再発例に限られる。リンパ腫の病型,病期(Ⅰ~Ⅳ),治療反応性などにより再発リスクを評価し,層別化治療を行う。現在,リンパ腫の長期生存率は約90%に達している。
リンパ腫の治療は高度な専門性を要するため,小児血液・腫瘍専門医にゆだねるべきである。治療は長期にわたり,患者本人のみならず,患者家族にも多大な負担となる。治療にあたっては,十分なインフォームドコンセントを取得するとともに,多職種による十分なケアが行われることが望ましい。
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