耳小骨奇形は,外耳が正常なminor malformationと,異常を認めるmajor malformationとに分類され,major malformationでは先天性外耳道閉鎖症や狭窄症などの外耳奇形を合併する先天性疾患である。本疾患には耳小骨連鎖の離断と固着があり,複数の奇形が合併する複合奇形も存在する。耳小骨奇形の分類には,Ansonらの発生学的視点1)に基づいた舩坂の分類2)が用いられ,Ⅰ~Ⅲ群に分類される。
鼓膜所見に穿孔や陥凹などの異常所見がなく,純音聴力検査で伝音難聴を認める場合は本疾患を疑う。純音聴力検査においてstiffness curve(高音域に比較して低音域の気骨導差が大きい)を示す場合は,ツチ・キヌタ関節もしくはアブミ骨底板の固着によるものが多く,水平型の場合はキヌタ・アブミ関節の離断が多いとされ,術前の病態を推測する指標となる。ティンパノグラムでAd型を示す場合は耳小骨の離断,As型は固着であることが多いが,必ずしもその限りではない。
診断には側頭骨CTが有用であり,耳小骨連鎖の離断は容易に判断できる。ただし,アブミ骨固着の症例は画像での診断はできない。
本疾患に対する治療は聴力改善を目的としたものであり,基本的な治療は外科的治療となる。患者が聴力改善を望む場合は手術を勧めるが,患者の生活環境や発育環境を考慮して手術時期を決定する。耳小骨奇形に対する術後聴力成績は一般的に良好であり,手術に消極的な説明は聴力改善の時期を逸し,不自由な学校生活を強いられる可能性があるため,手術治療に対する適切な治療方針の立案と説明が必要である。
アブミ骨の固着を伴う耳小骨奇形ではアブミ骨手術が必要となるが,耳硬化症に対するアブミ骨手術より聴力改善が困難な例が多いことに留意する。顔面神経の走行異常がある症例では,アブミ骨底板の操作やコルメラを用いた連鎖再建が不可能な事例も存在し,耳小骨連鎖の再建を断念する場合がある。
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