菅義偉氏は9月16日の臨時国会で第99代内閣総理大臣に選出されました。本稿では、少し気が早いですが、菅首相・菅内閣の社会保障・医療改革を予測します。菅首相は社会保障・医療改革への関心が極めて低いが、医療分野では「不妊治療の保険適用」と「オンライン診療の恒久化」を一点(二点)突破的に目指すと思います。ただし、それらが菅首相の思惑通りに実現するとは言えません。
私は、この1か月間、菅氏の著作・論文・発言を集中的に読みましたが、それらに社会保障・医療(改革)への言及がほとんどないことに驚きました。
例えば、『文藝春秋』10月号(94-101頁)の「我が政権構想」は社会保障・医療改革に全く言及していません。菅氏の唯一の著書『政治家の覚悟 官僚を動かせ』(文藝春秋企画出版部,2012年)には、菅氏の衆議院議員としての業績が網羅的に書かれていましたが、社会保障・医療改革についての言及はありません。実は、菅氏は小泉内閣時代に総務大臣として、旧「公立病院改革ガイドライン」のとりまとめに着手し、公立病院の民営化・経営効率化を正面から打ち出したのですが、それにも全く触れていません。
菅氏が9月上旬に発表した「2020年総裁選パンフレット」は6本柱ですが、「少子化に対処し安心の社会保障を」は5番目で序列が低く、しかも、医療にはほとんど触れていません。後述する不妊治療の保険適用もオンライン診療の恒久化もありません。