胸椎後縦靱帯骨化症(胸椎OPLL)は稀とされてきたが,日本人や東アジア人に多い頸椎OPLLに,胸椎OPLLが高率に併発することが報告され1),近年の画像診断の進歩もあり胸椎OPLL症例が増加している。全脊椎に骨化が及ぶ重篤な骨化は女性に多いとされるが,胸椎OPLLに特化した疫学は不明である。一方,わが国での胸椎黄色靱帯骨化症(胸椎OLF)の有病率は12~60%であり,胸椎OLFに椎間板ヘルニアや胸椎OPLLを併発することが多く1),高度胸髄圧迫により重篤な脊髄症状を呈することがある。
胸髄圧迫症状による体幹~下肢の疼痛,しびれ,感覚障害に加え,重篤になると運動麻痺による歩行障害や膀胱直腸障害をきたす。
脊髄症状の程度により治療方針を検討する。CTで胸椎OPLLや胸椎OLFが診断されても,脊髄圧迫所見や脊髄症状がごく軽度であれば,経過観察も可能である。骨化巣は徐々に増大することも知られており,症例に応じ定期画像検査で骨化巣の増大の有無を確認する必要もある。下肢運動麻痺や歩行障害がなく,胸髄由来の疼痛やしびれだけが問題となる場合は,対症的に投薬で症状緩和をめざす。しかし,胸椎OPLL,胸椎OLF症例は重篤な胸髄症状を呈することも多く,下肢運動麻痺や歩行障害,膀胱直腸障害などをきたせば手術治療の適応となる。
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