白血病は小児悪性腫瘍の中で最も多い疾患で,急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL),急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)に分類される。このうちALLは約70%,AMLは約20%を占める。小児ALLの約85%はB前駆細胞性ALL(B-cell precursor ALL:BCP-ALL)で,約15%がT細胞性ALL(T-ALL)である。小児の急性白血病の発生機序は十分解明されていないが,ダウン症候群(DS)などの遺伝性・先天性疾患や,放射線被ばく,特定の化学療法薬の影響で発症することが知られている1)。
臨床症状として,白血病細胞の増殖による症状と,正常造血の低下による症状とにわけられる。具体的には,前者によるものとして発熱,疼痛,肝脾腫,リンパ節腫脹,睾丸腫大などがあり,後者によるものとして,出血傾向,貧血,易感染性などがある。臨床症状はこのように多岐にわたるが,いずれの症状も特異的ではない。症状が持続するもの,通常の治療では改善されない上記の症状をみた場合,急性白血病を鑑別に挙げる。診断には,まず末梢血液検査を行い,疑いがあれば骨髄検査を行う。病型の判定には,細胞表面マーカーの検査が必須である。また,治療の層別化のために,染色体分析,FISH法およびRT-PCR法によるキメラ遺伝子スクリーニングを行う。
治療の主体は多剤併用化学療法であり,国内では日本小児白血病リンパ腫研究グループによって多施設共同の治療開発が行われている。診断時の白血球数や年齢,染色体・遺伝子異常,微小残存病変(MRD)を含めた治療反応性など,既知の予後因子によりリスクを評価し,それに基づく層別化治療が行われている。ALLにおいてはMRDが最も強力な予後因子として確立されている。一方,AMLにおいては,inv(16)やFLT3-ITD異常などの染色体・遺伝子異常が依然として強力な予後因子である。
現在,ALLでは約80%,AMLでは約70%の治癒率が得られている。ALL,AMLのいずれにおいても寛解導入不能例および一部の特殊な染色体・遺伝子異常を持つ予後不良例は造血細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)の適応となる。HSCTは移植前処置(全身放射線照射や大量化学療法)および移植後の同種免疫効果による抗白血病効果が期待できる強力な治療法であるが,様々な急性期および晩期合併症のリスクを伴う。急性白血病の治療は高度な専門性を要するため,小児血液・がんの専門家にゆだねるべきである。
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