新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、2020年度補正予算で創設された「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」。8月には多くの都道府県で申請受付を開始したが、厚労省には従業員の代理申請を行う医療機関等が「申請してくれない」との声が多数寄せられており、同省は8月26日の事務連絡で医療機関等に対し適切な給付への協力を求めた。都道府県の中には申請受付期限が迫っている自治体もある。申請漏れがないよう、特に注意すべき点について解説する。
「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」は、2020年度補正予算で創設された「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」のうち、感染リスクを抱えながら医療を提供する医療従事者への支援として実施されている事業。
感染リスクが高く心身に大きな負担がかかる中、強い使命感を持って業務に従事している医療従事者や従業員に対して、「感謝の気持ち」とともに給付するという趣旨に基づき、医師や看護師だけでなく、患者と接する可能性のある幅広い職種が対象とされていることが特徴だ。収入減の危機に晒されている多くの医療機関等の従業員にとっては、非課税の貴重な“一時金”となりうる。
7月から申請受付がスタートし、早い自治体では8月から給付を開始しているが、厚労省には「対象となる医療従事者等が慰労金の申請を希望しているのに、医療機関等が慰労金を代理申請してくれない」「医療機関等が派遣労働者や受託業務従事者の分を代理申請してくれない」などの声が寄せられた。
これを受け、厚労省は8月26日に事務連絡「医療機関等に勤務する医療従事者等に対する慰労金給付に係る協力の依頼について」を発出。医療機関等に対し、「対象者をとりまとめるようご理解、ご協力を頂くことが極めて重要」と強い表現で協力を求めた。東京都の担当官によれば「事務連絡以降、申請が増えてきている」という。
申請漏れのないよう47都道府県の申請受付期限一覧を表にまとめた。
すでに9月末で受付を終了しているのが大分県。大阪府は受付開始当初は9月末までを期限としていたが、10月末まで延期した。このほか埼玉県、富山県、山梨県、愛媛県が10月末を期限としており、申請を予定している医療機関等は手続きを急ぐ必要がある。期限までに申請できない場合は、特例的に受付期限を延長するなど一定の救済措置を受けられる可能性もあり、早めに都道府県の窓口に相談することをお勧めする。
東京都は11月末に設定。すでに医療機関を退職した元従業員で医療機関経由の申請が難しく個人で申請する「個別」の場合は、3月末まで受け付ける。千葉県と福島県も11月末が期限となっている。
このほか多くの自治体が期限としているのが12月と2021年2月。郵送の場合は消印有効や必着など規定が異なるケースがあるため注意が必要だ。詳細は各都道府県のWebサイトから確認してほしい。
慰労金の給付対象と給付金額を整理したのが上図。給付金額は3類型あり、最も高い20万円が支給されるのは、「都道府県から役割を設定された医療機関等」のうちCOVID-19患者を受け入れた医療機関等に勤務している場合。都道府県から役割を設定された医療機関等とは、①重点医療機関、②感染症指定医療機関、③その他の都道府県がCOVID-19患者の入院受け入れを割り当てた医療機関、④帰国者・接触者外来を設置する医療機関、⑤地域外来・検査センター、⑥宿泊療養・自宅療養を行う場合のCOVID-19患者に対するフォローアップ業務、受入施設での対応等─を指す。
「役割を設定された医療機関等」でCOVID-19患者の受け入れがなかった医療機関等に勤務している場合は10万円。発熱外来の設置などCOVID-19への具体的な取り組みをしていないそのほかの保険医療機関や指定訪問看護事業者の訪問看護ステーション、助産所等の従業員等には5万円が支給される。
対象期間に10日以上勤務した医療従事者や職員のうち、「患者と接する業務」に従事していた場合に給付対象となるが、厚労省は「患者と接する業務」の解釈について問い合わせが多数寄せられたことを受け、8月3日にQ&Aで見解を示している。
Q&Aによれば、病棟や外来などの診療部門で患者の診療に従事したり、受付、会計等窓口で対応したりする職員は通常該当する。また診療に直接携わらないものの、医療機関内の様々な部門で患者に何らかの応対を行う職員等は医療機関における勤務実態等に応じて該当する可能性が高い。
一方、テレワークのみの勤務の場合や、医療を提供する施設とは区分された当該法人の本部等での勤務のみの場合は該当しないとしているが、「医療機関内で患者に何らかの対応を行うことになっている場合」は患者と接する医療従事者や職員に含まれる。
厚労省の見解には、より多くの医療従事者等へ幅広く給付したい意向がうかがえる。医療機関にとっては申請の手間はかかるが、今後季節性インフルエンザとCOVID-19の「ツインデミック」の懸念もあり、従業員のモチベーションアップを図るという観点からも是非申請を行ってほしい。
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