社会保障審議会介護給付費分科会は10月30日、「令和2年度(2020年度)介護従事者処遇状況等調査」の結果について報告を受けた。それによると、「介護職員等特定処遇改善加算」を取得している施設・事業所の介護職員の平均給与額が、前年に比べて1万8120円増加したことが明らかになった。
「介護職員等特定処遇改善加算」(以下、「特定処遇改善加算」)は、19年10月の介護報酬改定時に導入。経験・技能のある介護職員(勤続10年以上の介護福祉士)に月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に公費1000億円を投じて、2段階の加算が設定された。ただ、加算財源による処遇改善の対象職種(経験・技能のある介護職員/他の介護職員/その他の職種)をどこまで広げるかについては、事業所の裁量に委ねられている。
今回の調査結果をみると、「特定処遇改善加算(I)・(II)」を取得した施設・事業所の介護職員の20年2月の平均給与額は32万5550円で、前年同月に比べて、1万8120円増えた。このうち勤続年数10年以上の介護福祉士の平均給与額は、前年同月比2万740円増加の36万6900円となった。給与等の引き上げ実施方法は、「手当の引き上げ・新設」(54.0%)、「定期昇給を実施」(51.4%)、「賞与等の引き上げ・新設」(25.9%)の順に多かった。
「特定処遇改善加算」を配分した職員の範囲は、「経験・技能のある介護職員」(93.4%)、「他の介護職員」(85.4%)、「その他の職種」(60.0%)と、6割の事業所がその他の職種にまで配分。その内訳では、「生活相談・支援相談員」(69.1%)、「看護職員」(65.3%)、「事務職員」(64.4%)、「介護支援専門員」(47.1%)が上位となった。また、配分の際には、まず経験・技能のある介護職員のうち、1人以上に対して「月額平均8万円の賃金改善」または「改善後の賃金が年額440万円以上となる賃金改善」を行うことが求められるが、実際に対応した事業所は6割を超えた(もともと年額440万円以上の者がいた場合を含む)。
算定要件でもある「介護職員処遇改善加算」の(I)〜(III)を取得している事業所に占める「特定処遇改善加算」の取得率は63.3%。内訳は、加算(I)が34.7%、加算(II)は28.6%だった。「特定処遇改善加算」の届出をしない理由では、「職種間の賃金バランスがとれなくなる」、「賃金改善の仕組みを設けるための事務作業が煩雑」、「介護職員間の賃金バランスがとれなくなる」、「計画や実績報告書の作成が煩雑」などの回答が多かった。