社会保障審議会介護給付費分科会は10月30日、介護保険施設や居宅介護支援の報酬について議論した。介護療養型医療施設(介護療養病床)から介護医療院への移行支援では、有床診療所から転換する場合は浴室の施設基準を緩和することや、基準・報酬・地域医療介護総合確保基金・予算事業などを組み合わせた施策の検討を進めることを提案。介護医療院に関しては、療養病床の長期入院患者を受け入れた場合の評価を検討する案を示した。
介護療養型医療施設は2023年度末での廃止が決まっており、介護医療院への早期移行を後押ししようと、18年度改定では療養室の床面積や廊下幅の基準緩和、「移行定着支援加算」(21年3月末までの時限措置)の新設―などの対策が講じられた。だが、介護療養型医療施設を対象にした調査では、廃止期限の23年度末時点も現在の施設類型のまま留まる意思表示をした施設が23.7%あり、分科会の議論でも問題視されていた。特に有床診療所は、施設数・病床数のいずれをみた場合も病院に比べると、移行が遅れている。
原因は浴室の設備にあると考えられ、介護医療院は施設基準で一般浴槽の他に、介助を必要とする入所者用の特別浴槽を設けることが求められているが、医療・介護療養病床を持つ診療所が一般浴槽以外の浴槽を備えている割合は、病院よりも低い。このため厚労省は、有床診からの転換で、入浴用リフトやリクライニングシャワーチェアなどにより、身体の不自由な者が適切に入浴できる場合は、一般浴槽以外の浴槽の設置を求める基準を緩和することを提案した。
その他の移行支援策では、「移行定着支援加算」の算定期間延長を求める声も出ているが、介護報酬や基準での対応に限定せず、地域医療介護総合確保基金や予算事業も含めた幅広い視野での検討を促した。
介護療養型医療施設に関しては廃止を見据え、医療療養病床を参考に、報酬を引き下げる方針を打ち出した。20年度の診療報酬改定では介護療養型医療施設と同時に廃止される、看護職員配置25対1の医療療養病床の入院料について、減算率をそれまでの10%から15%に厳格化する見直しが行われている。
一方、介護医療院は、長期療養施設や生活施設としての機能の充実を図る。医療療養病棟の患者の2〜3割は入院期間が700日を超えるが、地域に看取りを行う介護施設が少ないことが、入院長期化の要因のひとつとなっている。解決策として、厚労省は、療養病床の長期入院患者を受け入れた場合の評価を検討することを提案。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などに沿った看取りを推進するための対応も、検討課題に位置づけた。