【薬剤の貼付,投与の時間を変更するだけで効果が出る場合もある】
パーキンソン病は,診断から約5年で,約50%にウェアリング・オフが生じます1)。「パーキンソン病診療ガイドライン」によれば,ウェアリング・オフに対して,まず,L-ドパ製剤の投与回数を4~5回に増やす,またはドパミンアゴニストの開始・増量・変更などが提唱されています2)。ただし,質問者の場合は,薬剤を増量する前に,もしロチゴチン(ニュープロ®パッチ)を朝に貼り替えているのであれば,夜の貼り替えに変更してみることで,やや朝のオフが改善する可能性があります。
また,もし,L-ドパを朝食後に内服しているのであれば,朝食前に変更,または,22時から早朝に変更するなど,タイミングを変えるだけで朝のオフが改善する可能性があります。その結果,夜間のオフが出るならば無理をせず,起床時にもL-ドパを追加で1錠内服するか,ニュープロ®パッチを少し増量するのがよいでしょう。また,モノアミン酸化酵素B(monoamineoxidase B:MAO-B)阻害薬の追加も選択肢となります。
上記の方法で,どうしても朝の立ち上がりが悪い場合には,アポモルフィンの皮下注を使用する方法もあります。
さらに,おそらく現時点では不要だと推測されますが,将来的に1日5回以上内服しても2時間以上のオフが生じる場合はデバイス補助療法(脳深部刺激療法,レボドパ/カルビドパ経腸注入療法)なども検討することができます。
【文献】
1) 服部信孝, 他, 訳:運動障害診療マニュアル:不随意運動のみかた. 医学書院, 2013.
2) 「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会, 編:パーキンソン病診療ガイドライン2018. 日本神経学会, 監修. 医学書院, 2018.
【回答者】
大山彦光 順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科 准教授
服部信孝 順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科 教授