社会保障審議会は1月13日、介護保険の指定居宅サービスなどの人員、設備、運営に関する基準について、田村憲久厚生労働大臣からの諮問通り改正することを答申した。感染症や災害への対応力を強化するため、全サービスを対象に業務継続計画(BCP)の策定を義務付けるほか、科学的介護の実現を目指して介護情報のデータベースであるCHASEとVISITの活用を促す。答申を受けて、厚生労働省は近く改正省令を交付する。
全サービスに共通の改正内容では、感染症まん延への日頃からの備えとして、BCPの策定や訓練の実施を義務化(3年間の経過措置を設定)。運営基準で実施が求められる各種会議は、感染防止や多職種連携が促されるよう、テレビ電話などのICTを活用しての実施を広く認める。2021年4月からのCHASEとVISITの一体的運用開始を見据え、両データベースを活用した計画の作成、事業所単位でのPDCAサイクルを推進し、ケアの質向上につなげる。
短期入所系・施設系サービスでは、個室ユニット型の施設について、ケアの質の維持と人材確保を両立させるための見直しを実施する。具体的には「おおむね10人以下」とされている1ユニットの定員を、夜間・深夜を含めた介護・看護職員の配置の実態を勘案して職員を配置するよう努めることを求めつつ、「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えない」に緩和。ユニット型個室的多床室の新規設置は禁止し、個室化を後押しする。
施設系サービスでは、▶入所者ごとの状態に応じた口腔衛生管理の実施、▶栄養ケアマネジメントを基本サービスとして実施し、栄養士または管理栄養士を配置、▶入所者ごとの栄養管理の計画的実施―を求めることとする(3年間の経過措置を設定)。介護医療院については、有床診療所から移行する場合の設備基準を一部緩和。新築や大規模改築を行うまでの間は、一般浴槽以外の浴槽の設置は求めないこととする。
居宅介護支援では、ケアマネジメントの公正中立性を確保する観点から、過去6カ月間に作成したケアプランにおける訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの割合と、これらサービスが同一事業者によって提供された割合について、利用者に説明することを新たに求める。生活援助の訪問回数が多い利用者への対応として、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ訪問介護が利用サービスの大部分を占めるケアプランを作成する事業者を事業所単位で抽出する、点検・検証の仕組みを10月から導入する。