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脳腫瘍(小児)[私の治療]

No.5048 (2021年01月23日発行) P.44

柳澤隆昭 (東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座特任教授)

登録日: 2021-01-25

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  • 小児脳腫瘍は,小児がんの約20%を占め,白血病につぐ頻度を持つ。その頻度は,全体では希少がんに分類される成人脳腫瘍の約1/10で,100種類を超える腫瘍から構成され,個々の腫瘍はきわめて希少な腫瘍である。集学的治療の導入により,他の小児がんと同様治療は進歩したが,小児がんによる死因の首位を占め,また合併症・後遺症の最大の要因となっている。生存率とquality of life(QOL)の向上は,小児がん治療に残された世界共通の最大の課題である。

    ▶診断のポイント

    主な初発症状として,①頭痛,②嘔気・嘔吐,③眼科学的症状,④運動機能障害,⑤行動の変化,⑥尿崩症,⑦痙攣,⑧意識障害,が挙げられる。症状から脳腫瘍を疑い,CTやMRIなど画像検査で腫瘍の存在が検出され診断される。これらの症状は,より一般的な疾患による場合がほとんどで,初期に脳腫瘍を疑うのは困難な場合が多い。稀であっても,鑑別診断として脳腫瘍の可能性があることを想定することが重要である。各種画像診断技術が進歩した今日でも,発症から診断までの時間が短くなっていないことが示されている。脳腫瘍を疑うまでの時間に左右されるためである。発症から診断までの時間は,悪性度の高いものほど短く,悪性度の低いものは長い。

    確定診断は,採取された腫瘍の病理診断を必要とするが,小児脳腫瘍の病理診断は困難な場合が多い。近年の分子生物学的研究の発展により,分子異常所見から,従来単一疾患とされた腫瘍が複数の腫瘍から構成される可能性が示唆されており,分子生物学的所見が,病理所見とともに診断に導入されるようになっている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    小児脳腫瘍では成人と異なり,テント下腫瘍(小脳テントより下の小脳,第四脳室,脳幹部に発症する腫瘍)が約6割と,テント上腫瘍より頻度が高い。テント下腫瘍は,閉塞性水頭症を併発し緊急に治療を要する状態で診断に至ることも多い。きわめて稀な疾患が多く,診断・治療には高い専門性が求められるため,早期に専門施設に紹介することが望ましい。

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