腰椎分離症は,発育期に好発するスポーツ障害である。すべり症も発育期に生じることが多い。成人分離症は有症状となることは少ないが,すべり症では有症状となることがある。発痛源が椎間板周囲かあるいは分離周囲かを同定し,pain generatorに応じた低侵襲治療が望ましい。
分離症の始まりは疲労骨折である。骨吸収が中心の疲労骨折である初期,完全骨折である進行期を経て,終末期の偽関節となる。成人で疲労骨折が生じることは,きわめて稀である。我々も,この10年間で10~20症例の経験があるのみである1)。いずれもトップアスリートであった。成人でもトップアスリートでは,新鮮分離症が生じる可能性があることを知っておく必要がある。この場合,pain generatorは骨折による腰痛である。
成人で分離由来の症状が出る場合,多くは偽関節期の分離部水腫である。水腫は通常のT1あるいはT2強調画像では描出困難であり,STIR-MRIが必要とされる。分離部ブロックでの疼痛消失をもって,確定診断する。
分離症は時にすべり症へと進展する。その多くは発育期にすべり症に移行する。pain generatorとしては,以下の5点に集約される。
①分離部に生じたragged edgeによる神経根症状,②椎間板狭小化に伴うforaminal stenosisでの神経根症状,③椎間板性腰痛,④type 1 Modic changeによる腰痛,⑤分離部滑膜炎での腰痛。
ragged edgeはCT scan,foraminal stenosis・type 1 Modic change・滑膜炎はMRI,椎間板性腰痛は椎間板造影およびブロックにより診断される。分離すべり症といえば固定術というルーチンワークではなく,pain generatorを同定すれば,固定術に頼らない方法で完治が見込まれる。
腰椎分離症・分離すべり症は上記に掲げたごとく,多くのpain generatorが存在する。完治をめざした保存療法,完治をめざした観血療法を行うには,最初にpain generatorの同定が必要である。pain generatorに応じた治療指針をたて,完治をめざす。
残り1,745文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する