胎生期の心房中隔(一次中隔,二次中隔)の形成異常に起因する心房間での左-右短絡により,右心系の容量負荷をきたす疾患である。成人にみられる先天性心疾患では最も頻度が高く,女性に多い(1:2)。一般に,学校健診や職場健診で心雑音や心電図異常をきっかけに発見される。成人期まで気づかれなかった症例では,40歳以降に心不全,肺高血圧,心房頻拍により初めて発見されることがある。高齢者では,心房細動,右心および左心不全,肺高血圧などを合併し,治療に際してリスクが高まる。
30歳頃から易疲労感や労作時の息切れなど,右心不全による自覚症状が出現する。40歳以降になると,拡大した右室の圧迫により左心不全を引き起こす。50歳以降では,高血圧の発症や加齢に伴う左室コンプライアンスの低下により,心房間短絡が増加して症状がさらに進行する。
右心房および右心室筋のリモデリングが進行し,40歳以降に心房頻拍や心房粗細動などの不整脈の出現頻度が増す。
成人期以降も無治療で経過すると,肺血流の増加により肺血管閉塞性病変が進行する。肺高血圧により右室圧が左室圧を凌駕するようになると,欠損孔を介した右-左短絡によりチアノーゼがみられるようになる(Eisenmenger症候群)。
壮年期以降に比較的高率に合併する。高度の右室拡大に伴う左室の変形が原因と考えられる。
卵円孔開存では,いきみなどによる右房圧上昇により,下肢静脈系に形成された血栓が卵円孔を通過して左心系に入り,脳塞栓や腎動脈塞栓を引き起こすことがある。
先天性の心臓の構造異常であるため,基本的にはカテーテル閉鎖術または外科手術による治療を行う。現在,欠損孔および周辺縁の解剖学的条件が満たされる症例では,カテーテル治療が第一選択となる。カテーテル治療の適応から外れる症例や合併する先天性心疾患が存在する場合,外科治療の適応となる。
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