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成人脊柱変形[私の治療]

No.5055 (2021年03月13日発行) P.36

大和 雄 (浜松医科大学長寿運動器疾患教育研究講座特任准教授)

松山幸弘 (浜松医科大学医学部医学科整形外科学講座教授)

登録日: 2021-03-13

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  • 成人脊柱変形の原因は,変性,外傷,骨粗鬆症,先天性脊柱変形,症候群性など非常に多岐にわたる。また,これらの疾患は併存するために,多彩な変形と症状を呈する「症候群」であると言える。重度の脊柱変形は難治性疼痛や機能障害などを生じ,高齢者では著しくQOLが低下する1)。高齢者の健康寿命延伸の観点からも重要な疾患である。

    ▶診断のポイント

    症状は腰痛,背部痛,下肢痛のほかに,胃食道逆流症などの臓器障害,脊椎骨盤全体のアライメント不良から生じる歩行障害,外観上の整容・心理的問題などがあり,多岐にわたる。脊柱変形による腰痛は疲労性腰痛と表現され,短時間の起立歩行には問題がないが,時間や距離が長くなってくると体幹が前傾し,腰痛が出現することが多い。これは腰部脊柱管狭窄症による神経性間欠跛行と似ており,両者はしばしば合併するため,注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    対症的な治療が基本である。腰痛などの痛みに対しては鎮痛薬の処方や理学療法を行う。変形による歩行障害に対しては杖や歩行器の使用などを勧める。腰痛についてはコルセットが有効のこともある。腰部脊柱管狭窄症を合併している例では下肢痛を伴っていることもあり,神経障害性疼痛治療薬や神経ブロック療法も併用する。保存療法に抵抗し,著しいQOL障害を生じている場合は手術療法を考慮する。

    成人脊柱変形に対しては,主に胸腰椎の矯正固定術が行われ,良好なアライメントとQOLが獲得できる。ただし,高齢者の脊柱変形に対する矯正固定術では骨盤までの広範囲固定が必要となることが多い。骨盤までの固定を行った場合は脊椎と骨盤の可動性が完全になくなるために,術後に機能障害が生じる。すなわち,足の爪切り,ズボンをはく,床からものを拾う,床から立ち上がるなどの動作が困難になる。したがって,術後改善する症状と固定によって失う動作は何かをよく説明し,手術の適応を決める。
    成人脊柱変形には脊柱変形があっても痛みや機能障害が生じず,ADLの低下がない症例もある。そのために,脊柱変形の形態だけで治療を決定することはできない。どのような症例に対して手術療法などの積極的な治療を行っていくかについては,個々の生活様式や家庭環境,患者の希望などによっても大きく異なってくる。医師の総合的な判断が求められる。

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