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肺非結核性抗酸菌症診断における質量分析

No.5055 (2021年03月13日発行) P.42

渡邉恵介 (横浜市立大学呼吸器病学)

金子 猛 (横浜市立大学呼吸器病学主任教授)

登録日: 2021-03-16

最終更新日: 2021-03-10

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【新しい菌種同定法】

肺非結核性抗酸菌(NTM)症は,わが国をはじめ世界的に増加している1)。NTMには150以上の菌種が報告されており,喀痰や気管支洗浄液などから菌を培養,同定することにより診断される。わが国においては,Mycobacterium aviumとMycobacterium intracellulareで検出菌の約90%を占め,続いてMycobacterium kansasii,Mycobacterium abscessusの順で検出されているが,その他の菌種も検出されている1)2)

菌種により抗菌化学療法に用いる薬剤や予後が異なるため,菌種を同定することが重要である。菌の同定にはDNA-DNA hybridization(DDH)法などが用いられてきたが,同定できる菌種に限りがあり,稀少菌種については結核予防会結核研究所などに有料で遺伝子検査による同定を依頼する必要があった。最近,matrix assisted laser desorption/ionization-time of flight mass spectrometer (MALDI-TOF MS)による質量分析が抗酸菌同定に使用できるようになった。MALDI-TOF MSとは,レーザーで試料をイオン化し,分離されたイオンを検出したデータをもとにマススペクトルを作製し,そのパターンをデータベースに登録されている菌種と比較し,同定を行うものである3)。おおむね150種類以上の菌種が保険診療で容易に同定可能であり,この質量分析により今後の非結核性抗酸菌症診療の向上が期待される。

【文献】

1) Namkoong H, et al:Emerg Infect Dis. 2016;22 (6):1116-7.

2) Morimoto K, et al:Ann Am Thorac Soc. 2017;14 (1):49-56.

3) 大楠清文:医のあゆみ. 2017;263(13):1211-7.

【解説】

渡邉恵介,金子 猛  横浜市立大学呼吸器病学 *主任教授

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