株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

テニス肘[私の治療]

No.5058 (2021年04月03日発行) P.36

佐藤和毅 (慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター教授)

登録日: 2021-04-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • テニス肘は上腕骨外側上顆炎の通称であり,テニスのバックハンドストロークにより発症することが多いことからこの呼称がある。上腕骨外側上顆に付着する手関節・手指の伸展筋群(特に短橈側手根伸筋)腱起始部の障害であり,その病態は腱付着部の炎症,変性・微小断裂,また,その不完全修復としての幼若肉芽組織の形成である。難治性の慢性例には上記関節外病変に加え,関節内病変(滑膜ひだ障害)の関与する例も含まれると考えられる。

    疫学的には,30~50歳代での発症が多く,男性よりも女性に多い。スポーツとしてはテニス,バドミントン,卓球などのラケットスポーツやゴルフなどでみられるが,実際には労働や日常動作での発症が多い。ドライバー(ねじ回し)の使用,物品の運搬,草むしりなどの反復動作が原因となる。基本的には,腱付着部の変性とオーバーユース(過度の使用)に起因する。
    屈曲回内筋群が付着する上腕骨内側上顆に同様の症状が生じ,肘関節内側部痛を訴える病態が,上腕骨内側上顆炎である。テニスのフォアハンドストロークやゴルフで運動時痛が生じることから,フォアハンドテニス肘やゴルフ肘とも呼称される。

    ▶診断のポイント

    【問診】

    発症時期,スポーツ歴,仕事内容,どのような動作で痛みが生じるかを聴取する。多くは,手を強く握った状態や手関節伸展で疼痛を訴え,タオルを絞れない,ドアノブを回せない,歯を磨けない,などの症状を訴える。

    【身体所見】

    肘関節外側(上腕骨外側上顆)に疼痛,圧痛を訴え,グリップ動作で増悪する。外側上顆のみならず,伸展筋群に沿って前腕外側に疼痛を訴えることもある。患者に手をグリップした状態で手関節伸展,前腕回内をさせ,検者が患者の運動に抵抗を加える手関節伸展抵抗テスト(Thomsenテスト)や中指伸展テスト,chair testなどの疼痛誘発テストが診断に有効である。

    【画像所見】

    単純X線像で通常,明らかな異常を認めない。MRIで伸展筋群(特に短橈側手根伸筋)腱起始部の輝度変化(T2強調像で高輝度)や肘関節外側滑膜ひだを認める。

    ▶私の治療方針

    本疾患の多くは,労働やスポーツにおける反復動作が誘引となる。したがって急性期,すなわち疼痛が強く日常動作も制限される時期には,局所安静などにより炎症を鎮静化することが重要である。慢性期にはストレッチングや筋力強化訓練などを行う。難治例に対しては手術治療も考慮される。

    残り1,530文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top