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【書評】『診療所で診るトラベルメディスン』旅行を充実したものにするために学ぶべきことがすべて詰まった一冊

No.5061 (2021年04月24日発行) P.68

仲本光一 (岩手県県南広域振興局技監、奥州・一関保健所長)

登録日: 2021-04-21

最終更新日: 2021-04-20

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トラベルの語源はトラブルと同一でラテン語のtripalium(拷問道具の一種で三本の尖った杭)と言われており、古代から近年まで旅行は拷問なみに苦しいものだったものと思います。決して今回の新型コロナ騒動を予言した言葉ではありません…。しかし転地療養などという言葉もあり、旅行が精神的・肉体的な癒やしを一方でもたらすものであること、論を俟ちません。

その旅行を充実したものにしていただくために一般診療所が学ぶべき点がすべてこの一冊に詰まっています。移動、高所、時差、感染症、慢性病、小児、妊婦等に関するリスク、旅行前に準備しておくこと、旅行中の対応方法など、医学部の専門科別の講義では得られない知識が、横断的にまとめられています。

本書の編集は、長年、日本航空株式会社において旅客・乗務員の医療・健康に携わり、また日本渡航医学会トラベルクリニック部会長としてご活躍されている大越裕文先生です。当方が外務省で医務官をしていた時代にバンコクでお会いし、機内での患者発生時の対応について講義を受けたのは、もう20年以上前になります。それ以来、学会ほか勉強会の場で、いつもご指導いただいています。

執筆陣ですが、本当に素晴らしいです。渡航医学の世界で長年尽力されてきた先生方に加え、実際の臨床現場で対応されている先生方が、それぞれの専門分野の疾患対策について執筆しています。

巻末に資料編として関連WEBサイト一覧が記載されており、随時最新情報を得ることができます。さらに、一般臨床の先生方にはやや馴染みのない、渡航時の英文紹介状などが掲載されていますので、たいへん便利かと思います。ぜひ、ご利用ください。

外国への渡航が自由になるのはもう少し先かもしれません。それでも、日本のパスポートで査証取得なく渡航できる国の数は191カ国であり、2020年現在世界第1位です(Henley & Partners調べ)。ぜひ、若い人たちには世界に飛び出していただきたいと思っています。この書籍がその手助けになるためには、いわゆるトラベルクリニックのみならず、すべての診療所に教科書としておかれている必要があります。本書が若人や企業の世界進出、さらに国際協調の一助となるように期待しています。

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