多形滲出性紅斑(erythema multiforme:EM)は,特徴的な標的状の浮腫性紅斑(target lesion)が四肢伸側を中心に対称性に多発することを特徴とする。EMの大半は予後良好であるが,一部では粘膜病変とともに水疱・びらんを形成し,臓器障害などの全身症状を伴い重症化することもあるため,注意が必要である。成人では,単純ヘルペスや肺炎マイコプラズマなどの感染症,薬剤に対するアレルギーが原因であることが多い1)。
EMは小紅斑~紅色丘疹が四肢伸側に対称性に発症し,やがて遠心性に拡大して境界明瞭な類円形の浮腫性紅斑となる。個疹は辺縁が隆起し中心は陥凹して,EMに特徴的な標的状(target)もしくは虹彩状(iris)の外観を呈する(図)。特徴的な皮疹をみた場合の診断は比較的容易である。炎症が強いと中心部に水疱形成やびらんを認める。発熱や粘膜疹を伴う場合は重症化の可能性が高いため,注意を要する。また,感染症の症状や薬歴について詳細に問診することも肝要である。
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