意識障害は中枢性,全身性の様々な疾患・病態によって生じる。意識障害の鑑別診断に用いられるのが「AIUEO TIPS」〔A(アルコール,大動脈解離),I(インスリン→低血糖・高血糖),U(尿毒症),E(高血圧性・代謝性・自己免疫性脳症,内分泌疾患,電解質異常),O(低酸素,一酸化炭素中毒,オピオイド),T(外傷,低体温・高体温),I(中枢性・全身の感染症),P(精神疾患),S(ショック,敗血症,痙攣,脳卒中)〕である。
診療の遅れが生命予後,機能予後に影響する場合が少なくないので,一定の手順に従い迅速かつ網羅的に原因検索を進める。
以下の「AMPLES」を聴取し,原因を推測する。
①A(alcohol/allergy:アルコール摂取/アレルギー)
②M(medication:内服薬):抗血栓薬,糖尿病薬
③P(past history/pregnancy:既往歴/妊娠):てんかん,パーキンソン病・レビー小体型認知症,甲状腺疾患,心房細動,機械弁,慢性閉塞性肺疾患,胃・小腸切除後,肝硬変,糖尿病,慢性腎不全,担がん患者,精神疾患
④L(last healthy time/last meal:最終健常時刻/最終食事時刻)
⑤E(environment/event:状況/受傷機転):睡眠薬,農薬,食事摂取不良,火災,事故
⑥S(signs & symptoms:徴候と症状):短時間で回復する一過性意識消失(=失神の疑い),激しい頭痛,後頭部拍動性頭痛,痙攣,失禁,発熱,悪寒戦慄,胸背部痛
意識,呼吸(回数,パターン,SpO2),脈拍(徐脈,頻脈,不整脈),血圧(ショック,高度の血圧上昇),体温(高体温,低体温)を確認し,緊急処置の必要性を判断する。
一般身体所見:外傷(耳介後側の皮下血腫,舌の咬傷,手背の擦過傷,注射痕),皮膚色調(蒼白,紫斑,色素沈着),発汗,臭い(アルコール臭,アンモニア臭),腹水,下腿浮腫などを確認し,原因を推測する。
神経学的所見:言語障害(失語,構音障害),視野異常,瞳孔不同,口角下垂,バレー徴候,膝落下試験,歩行を確認し,局在診断を行って障害部位を推定し,検査法を決定する。
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