心不全は,「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義される1)。
湿性咳嗽,労作時呼吸苦,起坐呼吸,浮腫,夜間頻尿,末梢冷感など。
ラ音聴取,音の聴取,頸静脈怒張,圧痕性浮腫,体重増加など。
血液検査:BNP(脳ナトリウム利尿ペプチド)(>100pg/mL)/NT-proBNP(>400pg/mL)*,Cre/BUN,Na,K,心筋トロポニンなど。
心電図:心房細動や虚血所見がないか確認する。
心エコー:左室駆出率(LVEF),左室拡張能評価,弁膜症の有無・程度,下大静脈径2cm以上もしくは呼吸性変動50%未満*,肝内静脈逆流,胸水貯留など。
*:BNP/NT-proBNP値のみで機械的に心不全の診断をするのではなく臨床症状を含め総合的に判断する。
原因として虚血,弁膜症,心房細動,高血圧などがある。また増悪時の誘因として,虚血の再発,感染症,薬剤アドヒアランス不良,塩分過剰摂取,急激な血圧上昇による後負荷増大,貧血,不整脈(頻脈性と徐脈性),内分泌異常(甲状腺など)などが挙げられる。
A~Dのステージ分類で心不全の病期分類を行う。ステージCとDは症候性で,ステージDは,概ね年間2回以上の心不全入院を繰り返し,有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物が実施あるいは考慮されたにもかかわらずニューヨーク心臓協会心機能分類(NYHA)Ⅲ度より改善しないものと定義される。
慢性期および急性増悪時の介入が異なるため,LVEFの低下した心不全(HFrEF:Heart Failure with reduced Ejection Fraction),LVEFの軽度低下した心不全(HFmrEF:HF with mid-range EF),LVEFの保たれた心不全(HFpEF:HF with Preserved EF)の3つに区別する。
心不全の急性増悪時は,まずノーリア・スティーブンソン(Nohria-Stevenson)分類に従い血行動態(末梢循環不全orうっ血徴候かどうか)を評価する1)。低灌流所見を伴う場合(cold)はカテコラミンや機械的補助が必要となることがあり,循環器専門医のいる病院への搬送を考慮すべきである。
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