PaO2≦60torrであれば,酸素療法を開始する。しかし酸素のみでよいか,非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)も併用すべきか,またはNPPVを導入すべきかを病態から判断する。
2021年より在宅ネーザルハイフロー(高流量酸素療法:HFNC)が,慢性閉塞性肺疾患(COPD)でのみ使用可能となった。死腔の洗い流しでPaCO2は低下するが,NPPVと比べ,換気補助とはなりえず呼吸筋休息は見込めない。口を閉じてもPEEP(呼気終末陽圧)5cmH2O程度である。また在宅では,高濃度高流量の酸素は供給限界もあり,不可能である。そこで,より軽症なCOPDが適応となる。痰が多い場合に,加温加湿効果は非常に有効であるが,加湿用精製水の費用負担が大きい。
酸素化能の低下:Ⅰ型呼吸不全(PaCO2≦45torr)では,酸素を先行導入させる。呼吸筋疲労が募ったⅡ型呼吸不全(PaCO2>45torr)では,酸素の導入には注意を要するとともに, NPPVを導入し,呼吸筋休息を行う。
胸郭運動の低下:胸郭性疾患や神経筋疾患では,SpO2の低下は低換気の結果であり,換気補助を最優先に行う。睡眠時に呼吸不全が顕在化するため,病気の診断後は,定期的に夜間のSpO2モニタリングを行う。
PaO2≦60torrで酸素を導入する場合は,安静時,労作時,入浴時,睡眠時など,自宅の環境で酸素必要量を確認し処方する。変更操作が難しい場合には同量にせざるをえない。導入後は必ず,血液ガスでPaCO2の評価を行う。PaCO2≧55torrではNPPVを導入する。日中のPaO2>60torr,PaCO2<55torrでも,夜間SpO2<90%が5分以上継続,あるいは全体の10%以上を占める症例,急性増悪の入院を繰り返す症例にはNPPVを導入する。
SpO2<92%が4回以上,または全睡眠時間の4%以上にみられる場合,また既に進行し,日中のSpO2<94%か,PaCO2≧45torrの際にはNPPVを導入する。呼吸筋力の低下により有効な咳もできなくなるため,排痰補助装置も同時に導入する。球麻痺が急速に進み,排痰補助装置でも有効な排痰ができず,気道確保ができない場合には,気管切開下陽圧換気(TPPV)への移行を判断する。
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